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革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part5「保湿・補色」

前回は革靴の手入れの第一段階であるクリーニングについて説明しました。

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今回は、その後の工程である「保湿・補色」について説明していきます。

  1. クリーニング ← 前回はコレ
  2. 保湿・補色(乳化性クリームの塗り込み) ← 今回はコレ
  3. 鏡面磨き(蝋製ワックスによる磨き) ← 次回はコレ

保湿・補色

クリーニングが完了すると、皮革の表面のゴミや塵、こびり付いた汚れだけでなく乳化性クリームの層と蝋製ワックスの層が全て除去されるため、皮革が露出されます

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クリーニングすると皮革より上の層全てが除去される

非常にクリーンな状態ですが、表面の油分・水分が枯れた状態であるため、このままではすぐに乾燥して革靴の寿命を縮めてしまいます

そのため、乳化性クリームを塗り込んで保湿していく必要があります。

表面の状況によって異なる乳化製クリームを利用します。

乳化製クリームには主に色付きと色なし(ニュートラル)の2種類があり、表面の色が薄くなったり剥げている場合は前者を利用し補色を、それ以外や色を変えたくない場合はニュートラルを使います。

また、敢えて表面の色とは少し異なる色のクリームを部分的に使うことでグラデーションを作るといったオリジナリティを出していくことも可能です。

以下の革靴は本来茶色一色のものですが、メンテナンス時に爪先部分だけ焦げ茶のクリームを塗ることで重厚感を演出しています。

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1. 乳化性クリームの塗り込み

今回は若干のスレや色あせがあるので、表面の色と同じブラックのクリームを塗り込んでいきます。

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少量を直接手に取り、

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革靴の表面全体に塗り込んでいきます。アッパーとコバの接続部分にもしっかりと塗り込むようにしてください。

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で直接塗る理由は、体温によってクリームが溶けて馴染みやすくなるためと、塗り過ぎ防止のため

どうしても指を汚したくない場合は塗布用のペネトレイトブラシを使って塗る手もあります。

コバ部分に塗布しやすい一方で、ブラシ自体のメンテナンスが面倒なのがデメリットでしょうか。

[エム・モゥブレィ]クリーム塗布用ブラシ ペネトレィトブラシ 7012

[エム・モゥブレィ]クリーム塗布用ブラシ ペネトレィトブラシ 7012

塗り終わるとこのように塗りムラが出た状態になります。

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2. ブラッシング

今度はこれをブラシを使って均していきます。目的は塗りムラをなくすこと、クリームを皮に染み込ませること、そして余分なクリームを取り除くこと。

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ここで利用しているのは豚毛ブラシです。

[コロンブス] ブラシ 豚毛<ツヤ出し> 7091 シロ 約17?

[コロンブス] ブラシ 豚毛<ツヤ出し> 7091 シロ 約17?

見てわかるように真っ白で綺麗ですが、これは購入したばかりであるため。

いつもは馬毛ブラシを使っていたのですが、クリームを皮に塗り込むにはコシの強い豚毛ブラシが良い、ということで今回新しく購入して使ってみました。

革にクリームを押し込むイメージで、少し強めにグイグイとブラッシングしていきます。

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塗りムラがなくなりましたね。

3. 磨き

最後にフランネル布をきつく指に巻きつけ、乾いた部分で全体を磨いて「保湿・補色」の工程は完了です。

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次回は最後の工程である「鏡面磨き」について説明します。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part4「クリーニング」

前回は天然皮革の靴を選ぶ意味とメンテナンスの重要性、そして革靴のメンテナンスの工程について説明しました。

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メンテナンスの工程は以下の3つからなります。

  1. クリーニング
  2. 保湿・補色(乳化性クリームの塗り込み)
  3. 鏡面磨き(蝋製ワックスによる磨き)

今回は、最初の工程であるクリーニングについて詳しく説明します。

0. 今回モデルに使う革靴について

自分の持っている革靴は比較的綺麗なものが多い(割と新しいかつメンテナンスしている)ので、ビフォー・アフターが分かりづらいと思いました。

そこで、今回はモデルとなる革靴を別途、高円寺にある古着屋のWhistler様で購入しました。

ライブの合間に買い物に付き合ってくださったFor Tracy HydeのU-1さん(Gt.)、Sokoさん(Dr.)ありがとうございました!

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幅広かつ甲が低いという私の足に合うものを店員さんに探してもらったところ、いい感じの黒のウイングチップがHITしました。ちなみにアメリカ製。

状態は非常によく、若干色がくすんでいる程度で革底の減りもほぼなし。クリーニングだけでかなり綺麗になりそうということで、U-1さんとSokoさんの後押しもあり購入しました。

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黒のウイングチップ

Whistler様では購入時にクリーニングのサービスがあるそうですが、今回はメンテナンスの記事を書くために購入したので敢えてそのまま持ち帰らせていただくことに。

黒のウイングチップ持っていなかったのでちょうどよかったです。

1. 紐を抜く

ローファーなどの紐のない靴を除き、殆どの革靴には紐がついています。

紐が付いたままだとメンテナンス時にその部分が引っかかってしまって、均一に乳化性クリームを塗ったり汚れを取ることができません。

まずは紐を抜きましょう。

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2. シューキーパー(シュートゥリー)を入れる

シューキーパーとは、靴を適切な形に保つための道具です。

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シューキーパーを入れることで靴についたシワをしっかりと伸ばすことができます。

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これによって、後工程のブラッシングでシワの隅々のゴミを掻き出したり、乳化性クリームを奥まで浸透させることができるようになります。

シューキーパーはメンテナンス時だけでなく、履いていないときは常に入れておくことをおすすめします。

型崩れを防ぐことができるだけなく、木製であれば湿気を吸ってくれるためカビや臭いの発生を防ぐことができ、結果として革靴の寿命を大きく伸ばすことができます。

出張先に革靴を持っていく場合などは軽量なプラスチックのものを使うのもアリです(吸湿はできないので注意)。

3. ブラッシング

いよいよ本格的なクリーニングに入っていきます。まずはブラッシングです。

ブラッシングの目的は、靴の表面についたゴミや塵を掻き出すこと

ゴミが塵が靴の表面に付いたままだと、表面の水分・油分を吸うため乾燥しやすくなってしまいます。

また、後工程で乳化性クリームを塗り込んでいく際に、表面にゴミが残った状態だと革靴を傷つけてしまうと共に、表面にゴミを閉じ込めてしまうことにもなります。

ブラッシングには馬毛のブラシを使っていきます。

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[コロニル] 馬毛ブラシ 17cmx5.4cmx4.5cm CN044042 Brown F

[コロニル] 馬毛ブラシ 17cmx5.4cmx4.5cm CN044042 Brown F

馬毛ブラシは毛1本1本が細くてしなやかであるため、シワやコバ部分(アッパーから外にはみ出た部分)の汚れを掻き出すのに非常に適しています。

1cmくらい曲がるような強さで毛を表面に当て、箒で地面をはらうようなタッチで全体を磨いていきます。

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コバの部分は毛が隙間に入るように当てて、スナップを効かせて掻き出していきます。

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4. ワックス落とし

革靴のメンテナンスでは、乳化性クリームによる栄養補給と、蝋製のワックスによる鏡面磨き(光沢と表面の保護が目的)を実施します。

したがって、メンテナンス後の革靴の表面には乳化性クリームと蝋製ワックスによる層ができていることになります。図にすると以下のようになります。

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メンテナンス後の革靴の表面に形成される階層構造

古いワックスやクリームが残っていると保湿・補色ができないため、まずはクリーニングでこれらを順に取り除いていきます。

「ワックス落とし」の工程では最上層のワックスを落としていきます。所謂化粧落としの工程になります。

ワックスは蝋でできているので、油性のクリーナーを使って落としていきます

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まずはフランネル布を指に巻き付けます。このとき、指先の布がピンと張るようにします。

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指先で少量のクリーナーを取ります。取りすぎた場合は、指先を別の布にポンポンと付けて調節します。

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指先で弧を描くように、ワックスが付着した部分をこすっていきます。

通常ワックスは爪先と踵、両サイドなどシワができにくい部分に塗ります(シワができるとワックスを塗った部分はヒビ割れてしまうため)。

自分でメンテナンスした場合は塗った部分だけ、そうではない靴(中古や新品)は全体にかけていくのがよいでしょう。

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擦ると指先が黒くなっていくのがわかると思います。表面のワックスが浮いて布へと移ってきているためです。

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黒みが増してきたら、布を一旦指から解いて再度きれいな面が指先にくるようにします。

ワックス部分を擦り終わったら再度馬毛ブラシをかけます。これによって表面に残った余分なクリーナーを取り除きます。

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乾いた布で全体を磨いておくと更に綺麗になります。

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5. 乳化性クリーム落とし

クリーニングの最終工程は乳化性クリーム落としです。

水性のクリーナーを使って、全体の古くなったクリームと汚れを落としていきます。所謂洗顔の工程になります。

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[エム・モゥブレィ] 汚れ落とし M.モゥブレィ ステインリムーバー    60ml

[エム・モゥブレィ] 汚れ落とし M.モゥブレィ ステインリムーバー 60ml

こちらも少量を指先に取り、

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全体を指先で優しく、弧を描くように擦っていきます。こちらも指先が黒くなってきたら布の面を変えることを繰り返しながら実施していきます。

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全体を擦り終わったら、同じようにブラシで余分なクリーナーを落としていきます。

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これでクリーニングの工程は完了です。

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表面の汚れが取れて綺麗になりました(左がクリーニング後、右がクリーニング前ですが、分かりづらいと思うのでリンク先で拡大してみてください)。

次回はここに乳化性クリームを塗り込んでいく「保湿・補色」の工程について説明します。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part3

2回に渡って革靴について説明してきました。

前々回

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前回

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リーズナブルな合皮の靴が存在する中で、なぜ比較的高価な天然皮革の靴を選ぶのか。

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その理由はこれから説明するメンテナンス方法に大きく関係しています。

天然皮革の靴を選ぶ理由とは?

  • 長持ちする

    天然皮革で作られた靴は合皮や布製の靴と比較するととにかく丈夫であり、通常の利用ではまず破れたり千切れたりすることはありません。

    また、ケア用品を使って適切にメンテナンスしたり、ソール(靴底)を交換することで長い年月を共に過ごすことができます。

    特に、グッドイヤーウェルトという製法を採用している靴はソールの交換が容易であるため、3-10年もつと言われています。

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    グッドイヤーウェルトはコバ部分(靴底の外縁)の張り出しが大きくなっているのが特徴です。

  • 使い続けることで味が出る

    天然皮革で作られた革靴は、使い続けることによって色合いや手触りに変化が生まれ、所謂”ヴィンテージ”感が出ます。 そういった変化を楽しむことも革靴の魅力と言えるでしょう。

  • 持ち主に馴染む

    天然皮革は丈夫である一方で伸びるため、例えば靴であれば使っていくうちに伸びて使用者の足の形に馴染んでいきます。

    そういった理由から、購入するときは少しキツめのものを買い、シューキーパーを使ったり、何度も履き続けることで自分の足の形に変形させて合わせていくのがよいと私は考えています。

    逆にジャストなものを最初から買ってしまうと、履いているうちに伸びてフィット感が失われてしまいます。

    以上3つの理由から、革靴の良さは使い続けていくことにあると言えます。 だからこそ、メンテナンスが重要になってくるというわけです。

メンテナンスの流れ

では具体的なメンテナンスの流れについて説明していきましょう。

クリーニング

まず最初に実施するのはクリーニングです。

クリーニングとは読んで字の如く、靴を綺麗にすること。

過去に塗って古くなったクリームやワックス、通常の利用によって付着したゴミや塵を取り除くことによって、メンテナンスのための土台を作るのが目的です。

ゴミや余分なものが付いた状態でクリームを塗り込むと、ゴミまで一緒に塗り込んでしまうことになるだけでなく、ゴミがが表面の油分や水分を吸収し、乾燥の原因になってしまいます。

したがってクリーニングの工程が最も重要だと言えます。

保湿・補色

次に実施するのが保湿・補色です。

天然皮革も動物の皮なので、人間の皮膚と同様に適度に保湿する必要があります

そのため、全体に乳化性の保湿クリームを塗り込むことによって、適切な油分・水分を補給するのです。

クリームには色付きと無色(ニュートラル)のものがあり、色が剥げてきた場合や変えたい場合、部分的に違う色を入れたい場合は色付きを、そうでない場合はニュートラルのクリームを塗り込みます。

鏡面磨き

最後は鏡面磨きです。

よく先端がピカピカに光っている靴を見かけると思います。

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それを実現するための工程が「鏡面磨き」になります。

あの光沢は蝋でできたワックスを革靴の表面に塗り、水を使って磨きこむことにより実現します。

鏡面磨きの目的は単に靴自体に光沢を持たせて目立たせるだけではなく、靴の表面を蝋でコーティングすることによって、水や傷から護ることもあります。

次回はクリーニングについて詳しく説明します。

7meshのサイクルウェア(夏物)をレビューしてみた part2 - QUANTUM JERSEY MEN'S

前回はサイクルアパレルブランドである7meshと、そのサマーアイテムのラインナップについて簡単説明しました。

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今回はその夏物ウェアの中から、3種の半袖ジャージのうちの一つであるQUANTUM JERSEYについてレビューしていきたいと思います。

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さり気なく主張するブランドロゴ

QUANTUM JERSEYの前面・背面共にデザインは非常にシンプルです。

ピラミッド型のロゴがワンポイントで配置されています。

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このロゴ、シンプルながら妙に心惹かれるものがありませんか?

よく見ると2色の黄色で色分けされているのがわかります。

実はこの明るい上部分が"7"(7MESHの7)を、暗い下部分が"M"(7MESHのMESHのM)になっており、2つ合わせて7MESHを表すようになっているのです。

これに気づいたとき、一人でおお!となっていました(笑)

そしてこのピラミッドロゴは自転車乗りたちのシンボルである「山」にも見えるのですが、ただの山ではありません。

"7"はMt. Garbardi(ガリバルディ山)を、"M"はchief(チーフ)を、7MESH生誕の地であるカナダ、ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュを象徴する大と岩をモチーフにしているのです。

ブランドロゴを紐解いてみると結構面白いですよね。なんとなくですが、そのブランドが何を大切にしているのかわかるような気がします。

そしてこのワンポイント、よく見てみると光沢があり、そして触ってみるとグリップ感と凸凹を感じます

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ただのプリントではなく、ゴムのような素材を貼り付けた立体的な意匠になっているのです。

非常にシンプルなデザインにも関わらず見入ってしまうのは、そこに込められた意味とこの工夫が組み合わさった結果なのでしょう。

2つのジップ付きバックポケット

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これ、かなり珍しいと思います。

バックポケットにジッパー付きポケットを付けているジャージは多いですが、それを2つも付けているのは7meshくらいしかないのではないでしょうか。

この手のポケットは、貴重品やスマートフォンなど絶対に落としたくないものを入れるのにうってつけです。 QUANTUM JERSEYはジップ付きポケットが2つあるので、右側は家の鍵、左側は財布もしくはスマートフォンといった使い分けが可能です。

このあたりの設計思想は、激しく動くであろうMTBのウェアを作っている視点から来ているのでしょうか。 MTBのライドはロードよりも物を落としやすいですよね。

ジッパーを引っ掛けやすいようにリングが付いているのもポイント

便利な反面突き出た木の枝なんかに引っかかりそうな気もしますが、ロードで使う分には問題ないと思います。

抜群の着心地

身に纏ってまず他のジャージと違うな、と思うのが着心地の良さです。

とにかくフィット感が良い。言葉で表現するのが難しいですが、生地が肌に吸い付くような着心地

7meshのサイズチャートとRaphaのサイズチャートを比較した結果、私のサイズとしてはSが適切だとわかったので、Sをオーダー。

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身長183cm、体重67kgの私がSサイズを着ると見た目かなりピチピチに見える(サイクルジャージとしては許容範囲のフィット感なので特に問題はなし)のですが、見た目に反してキツい感じは全くなく、むしろ動きやすさすら感じるほど。

なんならこのままベッドに入ってしまいたい…そう思わせるぐらい抜群のフィット感があります。

同じくジャージを着用して試走していただいたzerocycleさんも「今までのジャージでは感じたことのないフィット感ですね」と仰っていました。

私の勘違いではないレベルでそうなんだということでしょう。

このQUANTUM JERSEYの着心地の良さを実現している要因の一つは、生地の組成がポリエステル100%であることでしょう。 ポリエステルは非常に耐久性が高く、速乾性に優れるのに加え、非常に肌触りが良いという特徴があります。

私の所持している他の夏用ジャージを見ると、ポリエステルに加えライクラ(エラスタン)を含むものが多いです。

イクラは伸縮性に富む素材のため、部分的・または分散させて組み込むことでジャージ全体の伸縮性を上げているのでしょう。

一方でQUANTUMは100%ポリエステルなので、ポリエステルが持つ肌触りの良さを強く感じるということかもしれません。

ポリエステルは強度が高い分伸縮性に劣りますが、それほど着心地の悪さを感じないのは以下2点の工夫によるものと考えられます。

人間工学に基づいた立体裁断

肩周りに三角形に線が入っているのがわかりますでしょうか?

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人間の筋肉・骨格の形に合わせて布を縫い合わせているため、このような線ができています。 このため通常のTシャツと同じように畳もうとしてもうまくいきませんが、いざ着てみると身体の動きに非常にフィットするようにできているというわけです。

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直立の状態で背中側を見ると生地が弛んでいますが、これはロードバイクに乗るときの姿勢に合わせたカッティングになっているから。 前傾姿勢になって初めて身体にフィットするように作られているわけです。

カニカル・ストレッチ

日本の7mesh公式サイトのQUANTUM JERSEYのページに「メカニカル・ストレッチ」という見慣れない単語が載っていました。

www.sun-west.co.jp

どうやらこのカニカル・ストレッチがジャージの伸縮性に一役買っているようです。

日本語で調べてみたのですがいまいちヒットしないので、英語で検索してみるとそれらしき生地素材の販売サイトがヒットしました。

www.homecrafttextiles.com.au

Mechanical stretch is a fabric that has stretch properties but spandex or other stretch yarns are not used when they are woven. The stretch is usually created in the finishing process, where the high twist polyester yarn once woven has a small amount of stretch which gives in garments.

説明文をまとめるとこんな感じでしょうか。

  • カニカル・ストレッチは伸縮性を持つが、スパンデックス(ライクラのこと)や他の伸縮性のある素材を使っていない。
  • ストレッチ(伸縮性)は仕上げ工程において加えられる。
  • 強く拗じったポリエステルの糸が少量のストレッチを衣服に与えるようになる。

つまり、ポリエステルをめっちゃツイストすることによって生まれた素材は若干の伸縮性を持ち、その作業を施した素材をメカニカルストレッチと呼んでいるということですね。

QUANTUMがポリエステル100%なのに着心地が良い理由がものすごくよくわかった気がしました。

なぜライクラを利用しないのか?

これは公式サイトにも書かれていることですね。

イクラは親水性が高い素材です。 つまり、一度水に濡れてしまうとなかなか乾かないということ。

夏は汗を沢山かくので、快適性という尺度ではできればライクラはあまり使いたくない素材なのかもしれません。

一方でスポーツウェアとしての機能性を考えると伸縮性は重要です。 それが少量のライクラを生地に利用するサイクルウェアが多い理由なわけです。

しかしイクラを利用しなくても伸縮性を担保できるとしたらどうでしょうか?

そこに一つの答えを出す素材がメカニカル・ストレッチであり、まさにQUANTUM JERSEYはそれを利用しているからこそライクラを利用する必要がないということでもあります。

優れた耐紫外線性能

このQUANTUM JERSEYはUPF 50+であり、これは衣類のUVカット性能としては最高値です。

UPFはUltraViolet Protection Factor(紫外線保護指数)の略で、UVカットの世界的基準値になります。

数値は高いほど紫外線を透過しない(つまり吸収する)ことになり、日焼けしにくいということになります。

例えばUPF 50であれば、その衣類を身に纏った場合、地肌を直接紫外線に晒したときよりも同じ日焼けにかかる時間が50倍になることを表しています。

つまり直射日光の下に10分いることでできる日焼けは、UPF 50の衣類を着ている箇所においては10*50=500分かかるということです。

50+はその数値が50よりも上であることを示しています(50よりも大きい数値の場合は全て50+に丸められる)。

ちなみにポリエステルは元々高い対紫外線性能を持つということなので、組成をポリエステル100%にすることはQUANTUM JERSEYのUPFに大きなアドバンテージを与えていることになりますね。

洗濯におけるパフォーマンス

前述したようにQUANTUM JERSEYはポリエステル100%のため、強度が高いです。 したがってガシガシ洗濯していくことができます。

念の為洗濯表示を見てみましょう。

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  • 水温30℃を限度に、洗濯機で洗える
  • 漂白不可
  • ハンガーを使って吊り干し
  • アイロン不可
  • ドライクリーニング不可

洗濯機でガシガシ洗ってハンガー干しでOKですね。

漂白剤はNGです。カラー展開としては白がありますが、絶対に利用しないようにしましょう。

また、アイロンもご法度です。ポリエステルは可燃性が高く容易に燃えて(溶けて)しまいます

そもそもサイクリングジャージにアイロンかける必要はあるのか?いや、ないだろ…という気もするけど、猫を電子レンジに入れる人がいるくらいだからする人が出てきてもおかしくはないのか?

まとめ

QUANTUM JERSEYについてまとめてみるとこんな感じです。

  • 便利で使い分け可能な2つのジップ付きポケット
  • シンプルなデザイン、さりげなく存在感を主張するワンポイントロゴ
  • カニカル・ストレッチのポリエステルを使うことによる速乾性と伸縮性の両立
  • UPF 50+の高い対紫外線性能
  • 洗濯における耐久力の高さ

最高の技術と素材で優れたデザインのウェアを作る。そんなアークテリクスの魂を受け継ぐサイクルアパレルブランドである7mesh

このQUANTUM JERSEY一つとってみても、その魂を体現すべく様々な工夫がなされていることがわかりました。

実際に長距離を走ってみたレビューは後日アップしたいと思います(お約束)。

次回はメリノウール製のAshlu Merino Jerseyをレビューします。

7meshのサイクルウェア(夏物)をレビューしてみた part1

7meshとは?

7meshというサイクルアパレルブランドをご存知でしょうか?

7mesh.com

かの有名なクライミングギアブランドであるARC'TRYXの創設メンバーがカナダのブリティッシュコロンビア州 スコーミッシュでスタートさせたサイクルウェアブランドです。

ARC'TRYXは"There is always a better way"(「物事にはより良い方法が必ずある」)という哲学をブランドの根幹とし、最高峰と技術と素材、そして優れたデザインを兼ね備えたクライミングギアを生み出し続けるブランド。

そのデザイン性の高さはクライミングの範囲を超えてタウンにも及び、昨今ではブランドアイコンである始祖鳥の化石の意匠が刻まれたバックパックを背負う人々を街中で散見するようになりました。

そんなARC'TRYXの創立メンバーが始めたサイクルアパレルブランドが7mesh。

7meshのブランドコンセプトは『より快適でデザイン性の高いウェアで自転車に乗りたい』という、我々サイクリストが常日頃持つシンプルかつ当然の欲求に対し基準を設けること

性能とデザイン両方を追求するという点はARCT'RYXに通ずるものがありますね。

サイクリングというスポーツについて

サイクリングというと、皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか?

運動強度が低いスポーツであるという認識が多いのではないでしょうか。

サドルに座り続けるため、足だけで自重を支えるランニングと比較し足腰への負担が小さい。 同時に、上半身が固定されるため内蔵への負担も少ない。

確かに、他の運動と比較すると運動強度はかなり低いと言えます。

一方で運動強度が低いからこそ、長く走り続けることができるということを意味しています。

そして、その限界を試すような競技が自転車界には多く存在しているのです。

過酷なサイクリングイベント「ブルベ」

私が2018年一年間を通して参加してきたブルベ(Breveはフランス語で「認定」)というサイクリングイベントはその最たるもの。

ルールは非常にシンプルで、決められた制限時間内に決められたコースを走ることで認定されるというもの。

一見簡単そうですが、認定の中には距離は600km, 制限時間は40時間にも及ぶものもあります(PBPというパリで4年に1度開かれるブルベの王様は1200kmを60時間で走破しなければならない)。

(認定のバリエーションは200km, 300km, 400km, 600km, 1000km, 1200kmなど色々)

600kmというと、東京大阪間よりちょっと多いぐらいでしょうか。通常は新幹線や飛行機など文明の利器の力を使って行くレベルの距離感ですよね。

その600kmを40時間で走るとなると、常に時速15km出ていれば完走できます。 この数字は一見簡単そうに感じられますが、いざ走ってみるとこれが意外に厳しい。

特に600kmなど制限時間が1日を超える認定については、疲れからのパフォーマンスの低下・事故を防ぐために睡眠が必要になるケースが多いです。 (かなり速い人は睡眠なしで走ってしまうのですが、殆どの人は途中に睡眠を挟む)

そのためにスピードを上げて走り、そしてコンビニでの休憩時間を最小にし、時には走りながら食事し、なんとか作り出したバッファを睡眠時間に充てることで走り切れるという感じ。

ちなみに自分が600kmを完走したときは(走力が低いこともあり)39時間30分のギリギリでした。

サイクリングに求められるウェアの条件とは?

さて、そんなサイクリングに求められるウェアの条件とはどのようなものでしょうか。

サイクルパンツのパッド(ロードバイクなどのスポーツ用自転車のサドルはクッション性が殆どなく硬いため、自転車用のパンツには厚手のパッドが付いている)が薄いと、地面からの振動でお尻が痛くなるし、形状が合わないと股擦れを引き起こしてしまいます。

夏場は日焼けによる体力の消耗を防ぐと共に、かいた汗をすぐに発散させ肌を常にドライに保つことで快適性を担保する必要があります。

逆に冬場は冷たい風から身体を守りつつ、登坂などでかいた汗をうまく発散できないと長時間に渡って冷えが続き、体調不良やパフォーマンスの低下を招きます。

雨の際はしっかりと撥水すると共に、隙間から水の侵入を防ぎ身体を冷やさないようにしなければなりません。

加えて、長時間走り続ける場合は朝と夜の寒暖差、気温の変化などにも柔軟に対応できる必要があります。

と、このようにサイクリングというスポーツを長時間続ける場合は常に快適でなければならず、そのためにウェアの品質が重要になってくるわけです。

そんな領域に、今まさにアウトドア業界で培った技術を引っさげて風穴を開けようとしている7mesh(と勝手に想像)。 そのウェアは一体どんなパフォーマンスを発揮してくれるのでしょうか。

まずは今の季節柄入り用な夏物ウェアの全体像を紹介しつつ、それぞれを順に不定期でレビューしていきたいと思います。

夏用ウェア①: 選べる3種の半袖ジャージ

では早速7meshが誇る夏用ジャージについて紹介していきましょう。

なんと用途に応じて3種類から選ぶことができます。

  1. HIGHLINE JERSEY

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7meshが誇るジャージの中で最も軽量かつタイトなジャージです。 空力を意識したカッティングになっており、最もレーシー(競技向き)なモデルになります。

  1. QUANTUM JERSEY

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7meshのノーマルジャージと言っていいライン。 レース以外の練習やロングライドなどで選択することになりそうです。

  1. ASHLU MERINO JERSEY

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メリノウールを素材に使ったジャージです。当ブログでも何度か紹介しているメリノウール。 速乾性(通気性)と暖かさを両立しつつ、防臭・抗菌効果も期待できる素材です。

夏用ウェア②: パッカブルなウインドブレーカー

  • CYPRESS HYBRID JACKET

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ウインドブレーカー夏に必要なくない?と思う方も多いと思いますが、夏こそ森林限界を超える峠にチャレンジできる季節。

標高2,000mの峠ともなると麓よりも12℃ぐらい気温が低いことになるので、頂上や下りで確実に身体を冷やします。

そんなときの必需品がウインドブレーカー。

夏用ウェア③: ビブショーツ

  • MK3 BIB SHORT

www.sun-west.co.jp

ショートレングスのビブショーツです。 脚の動かしやすさやパッドの快適性などに着目してレビューしたいところ。

次回はQUANTUM JERSEYからレビューしていきます!

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続く

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part2

前回は私が革靴を好きになったきっかけについて説明しました(メンテナンスについて何も話してないし)。

weekendcycler.hateblo.jp

今回は革靴の定義から始まり、種類やTPOについて書いていこうと思います(メンテナンスの話ちゃうんかい)。

革靴の定義

まずは今回のメンテナンスで扱う革靴について定義したいと思います。

本記事では革靴を「天然皮革から作られた靴」と定義します。

天然皮革とは?

天然皮革とは、鞣(なめ)された動物ののことを言います。

鞣し(なめし)とは、樹液や薬品を用いて動物の皮に耐久性をもたせる工程のことで、 この工程を経ることで動物の皮膚である“皮”は製品に使用される”革”となります。

皮は生物の一部であるため、このような加工をしないと固くなったり腐敗してしまうというわけです。 所謂「本革」と呼ばれるものは天然皮革になります。

天然皮革になる皮を持つ生物は多種多様で、有名なところで言うと牛、ワニ、蛇、馬、カンガルーなど。

最も有名なのは牛革で、ほとんどの革靴は牛革製です。 仔牛から取るために傷がなくしなやかなカーフ、何度も蝋を塗り込み耐久性を高めたブライドルレザーなど。

www.ganzo.ne.jp

ブライドルの表面は白い粉がふいているように見えますが、これは塗り込んだ蝋と油が染み出した「ブルーム」というもの

一方でカンガルー皮はどうかというと、以前紹介したSPINGLE MOVEから カンガルー皮を使ったスニーカーが出ていますよね。

weekendcycler.hateblo.jp

カンガルー革は牛革とは比べ物にならないほど柔らかく、ストレッチに富んでいて非常に履き心地が良いです。 その性能を活かしてか、自転車用のシューズやサッカースパイクにも使われています

road.cc

BONTのシューズは非常に興味があったのですが自分の足とは合わなかったので断念した記憶が。。

また、馬の臀部、早い話がケツの皮から作られた皮革であるコードバン(cordovan)は、一頭から採取できる量が少ないことから希少性が高く非常に高級

非常に滑らかでしっとりとした質感が特徴的である反面、強度が弱いことから小物や革靴の内側などに利用されてます。

www.ganzo.ne.jp

キャッシュレス化が進みつつある昨今ですが、コードバン製の財布を手に入れるのが私の密かな夢だったりします。

あくまで趣味だから、機能とか気にしちゃいけない。

代表的な革靴の種類

前回のブログでブローグ(革靴のアッパーに小さな穴を空けて装飾としたもの)やオックスフォード(最もクラシックな革靴)について少し言及しました。

今回は革靴の種類についていくつか紹介したいと思います。

というのも、実はTPOに応じて最適な革靴のタイプが変わってくるからなんですね。フォーマルのときはこれ、パーティだったらこれ、カジュアルだったらこれ…みたいな感じで。

それをしっかり押さえてこそ紳士なわけです(自己満足だけどね)。 でもせっかくの友だちの結婚式、しっかりキメていきたくないですか?

ストレートチップ(キャップトゥ)

所謂キングスマンの劇中で言うところのオックスフォード(最もクラシックな革靴)がこのストレートチップになります。

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爪先に直線(ストレート)のステッチが入ったシンプルなデザイン。爪先(トゥ)にキャップを被せたような見た目なので、キャップトゥとも呼ばれます。

余計なものを削ぎ落としたその姿はとても美しいです。 何より、シワができやすい爪先に一直線が入っていることでシワが目立たなくなっているところがポイント高いですね。

写真で紹介している靴はスペインのMAGNANNI(マグナーニ)というブランド。

www.magnanni.com

クラシックでありながらモダンな遊び心が調和した非常に格好良い靴を作ります。 その証拠に、普通のストレートチップと違って縫い目のステッチが隠されているんですね。

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デザインは全体的にイタリア系のシュッとした感じ。

Santoniの革靴欲しいけど予算が。。という人におすすめなブランド。 www.santonishoes.com

ちなみに、このストレートチップは革靴のタイプの中でも最もフォーマルに適しています。

プレーントゥ

プレーン(平坦な、簡素な)トゥ(爪先)の名の如く、爪先に何の意匠もないまっさらなタイプの革靴です。

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装飾が一切ないシンプルなフォルムであるために、ベースとなる木型の形や革本来の質感が放つ魅力がより顕著に出るタイプです。

一方で、トゥ部分が一枚皮から作られるために、良い革でないと安っぽくなってしまったり、シワが目立ちやすくなってしまうといった欠点もあります。 故に故最も選び方が難しいタイプと言えるでしょう。

プレーントゥの特徴が最も色濃く出たのが、踵部分以外に継ぎ目がないホールカットです。

鏡面磨きでピカピカにすればかなりドレッシーになり、パーティーで目立つこと請け合いの一足です。

パンチドキャップトゥ

パンチド(穴の空いた)キャップトゥの名の通り、キャップトゥ(ストレートチップ)の一直線に沿って穴あきの意匠が入ったタイプになります。

最もフォーマルである「ストレートチップ」に飾り気が追加されたことで、やや格式が下がりますが、それでもキャップトゥに次いで格式高いフォーマルよりのタイプです。

ビジネスシューズとして選ぶのであれば、キャップトゥまで行かなくともこのパンチドキャップトゥでも十分畏まったスタイルと言えると思います。

ウイングチップ

ウイングチップは、トゥにW字の意匠があるタイプです。

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写真のように、ブローグ(穴あきの意匠)が組み合わせられることが一般的です。 このW字が翼のように見えることから、ウイングチップと呼ばれています。

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格式としては、パンチドキャップトゥより低いけれど、ぎりぎりビジネスでも履ける一足。 もちろん、穴あきのドレッシーさを活かしカジュアルでも履いていくのも良いですね。

ローファー

これは皆さんもご存知なのではないでしょうか?ローファーです。

今日紹介するシューズの中で唯一レースアップ(紐で結ぶタイプ)ではない革靴、所謂スリッポンです。

loaferという言葉自体が「怠け者」という意味を持つ他(本当の由来は不明)、紐がない(締まりがない)、着脱が容易であるということからビジネスシーンにはそぐわないとされています。

一方でそのスタイルは若さや開放感を感じさせ、カジュアルな場面では大活躍。

ワイルドな男性がフットカバーや素足にローファーを合わせるのはとても格好が良いですね。

またお客様先に行くのではなく、オフィスカジュアルとしてであればアリだと思います。

革靴のタイプを格式順に並べるとどうなるか?

ここまで紹介した革靴のタイプを格式高い順に並べると以下のようになります。

  1. ストレートチップ(キャップトゥ)
  2. プレーントゥ
  3. パンチドキャップトゥ
  4. ウイングチップ
  5. ローファー

ここで着目していただきたいのが以下の点です。

  • ストレートチップが最も格式高い
  • 穴あきよりも穴なしの方が格式高い
  • スリッポンよりレースアップの方が格式高い

また、前回少しだけ説明したように「内羽根式」の方が「外羽根式」の方が格式高くなります

更に、色は黒が最も格式高くなります

最も格式高い革靴は?

というわけで、これまでの情報をまとめると最も格式高い革靴はズバリ

黒の内羽根式ストレートチップ(キャップトゥ)となります。

これを一足持っておけば、結婚式でも、ビジネスでも、パーティーでも問題なし。

逆にここから外すとなると、場とセンスが問われることとなります。

結婚式の主役が年下や同僚なら黒のウイングチップでもOKとか、若者のパーティーならピカピカに磨いたホールカットとか。 場に合わせて色々という感じでしょうか。

最後に

「こういうシーンではこの革靴を履くべき!」というような言い方をしましたが、外していったからと言って怒られることは殆どありません。

というのも、正直言って日本では革靴のフォーマル度をわかっている人は少ないですし、街を歩くサラリーマンや結婚式で他人の靴を見ても千差万別です。

どちらかと言うと、革靴を選ぶ際の指標にしていただけたらいいなと思って書きました。

「今日は大事な商談だから、気を引き締めて黒のパンチドキャップトゥで行こう!」

とか、

「今日は休みの日だからローファーで少し崩したスタイルにしよう!」

とか。

そうやって考えたら靴選び、もといファッションも楽しくなりませんか?

私はそっちのほうが楽しいと思います。

今日はここまで。次回からは(やっと)メンテナンスに入ります。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part1

皆さん、革靴履いてますか?

かくいう僕は革靴が好きで、フォーマル・カジュアル問わず履いて街を歩くのが好きです。

勉強会で革靴のメンテナンス方法について説明するぐらい好きです。

革靴を好きになったのは2014年に観た映画「キングスマン」がきっかけでした。

kingsman-movie.jp

キングスマンは、英国紳士姿の凄腕のスパイ達が駆使して難事件・テロリズムを解決するというスパイ映画

その中でこのようなフレーズが出てきます。

“Oxford, not brogue.(「ブローグではなく、オックスフォード。」)”

ロンドンのサヴィル・ロウ(ロンドンのオーダーメイドの名門高級紳士服店が集中している通り、背広の由来)にある高級テーラーキングスマン」に電話をかけ、 この合言葉を言うとシークレットサービスに繋がる…という劇中の印象的なシーン。

ここでいうブローグとは、革靴に対して施す意匠の一つで、表面にパンチング(穴を開ける)して装飾にしたものを言い、 この意匠がある革靴はよりカジュアル向きになります。

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一方でオックスフォードは(諸説あるが)以下のような内羽根式、トゥ(つま先)と紐を通す鳩目部分が一体化している紐靴のことを言います。

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多分この説明だけだとわかりにくいので、外羽根式の例を一つ貼っておきます。

上記のように、鳩目部分がトゥから分離している(浮いている)タイプが外羽根式。 こちらはブラッチャー(blucher)という別名があります。

さて、ここで「ブローグではなく、オックスフォード」という台詞を思い返してみましょう。

ブローグは意匠、オックスフォードは靴のタイプ。

となるとこれらは比べられるようなものではないことがわかります。

何を言ってるかというと、「ブローグの装飾があるオックスフォードも存在し得る」ことになるわけです(というか↑で挙げた茶色の革靴がまんまそれなのですが)。

ではなぜ、「ブローグではなくオックスフォード」なのか?

ここでキングスマンのスタイルがクラシック重視のものであることを考えると、おそらくブローグのことをカジュアルな穴あきシューズ、オックスフォードのことを装飾のないシンプルでクラシックなシューズ、と表現したかったのでしょう。

ラシックスタイルであるキングスマンに相応しいのはシンプルなシューズであると。

これを知ったとき、これまで似たように見えていた革靴一つ一つが全て微妙に異なること、またその違いに意味があることに気づき「革靴面白いじゃん…」となったのでした。

それから5年程経過し、革靴とそのメンテナンス方法についてもある程度知識が付いてきたということもあるので、 今回は順を追って革靴とそのメンテナンス方法について説明していきたいと思います。

次回に続きます。