Weekendcycler

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7meshのサイクルウェア(夏物)をレビューしてみた part2 - QUANTUM JERSEY MEN'S

前回はサイクルアパレルブランドである7meshと、そのサマーアイテムのラインナップについて簡単説明しました。

weekendcycler.hateblo.jp

今回はその夏物ウェアの中から、3種の半袖ジャージのうちの一つであるQUANTUM JERSEYについてレビューしていきたいと思います。

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さり気なく主張するブランドロゴ

QUANTUM JERSEYの前面・背面共にデザインは非常にシンプルです。

ピラミッド型のロゴがワンポイントで配置されています。

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このロゴ、シンプルながら妙に心惹かれるものがありませんか?

よく見ると2色の黄色で色分けされているのがわかります。

実はこの明るい上部分が"7"(7MESHの7)を、暗い下部分が"M"(7MESHのMESHのM)になっており、2つ合わせて7MESHを表すようになっているのです。

これに気づいたとき、一人でおお!となっていました(笑)

そしてこのピラミッドロゴは自転車乗りたちのシンボルである「山」にも見えるのですが、ただの山ではありません。

"7"はMt. Garbardi(ガリバルディ山)を、"M"はchief(チーフ)を、7MESH生誕の地であるカナダ、ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュを象徴する大と岩をモチーフにしているのです。

ブランドロゴを紐解いてみると結構面白いですよね。なんとなくですが、そのブランドが何を大切にしているのかわかるような気がします。

そしてこのワンポイント、よく見てみると光沢があり、そして触ってみるとグリップ感と凸凹を感じます

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ただのプリントではなく、ゴムのような素材を貼り付けた立体的な意匠になっているのです。

非常にシンプルなデザインにも関わらず見入ってしまうのは、そこに込められた意味とこの工夫が組み合わさった結果なのでしょう。

2つのジップ付きバックポケット

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これ、かなり珍しいと思います。

バックポケットにジッパー付きポケットを付けているジャージは多いですが、それを2つも付けているのは7meshくらいしかないのではないでしょうか。

この手のポケットは、貴重品やスマートフォンなど絶対に落としたくないものを入れるのにうってつけです。 QUANTUM JERSEYはジップ付きポケットが2つあるので、右側は家の鍵、左側は財布もしくはスマートフォンといった使い分けが可能です。

このあたりの設計思想は、激しく動くであろうMTBのウェアを作っている視点から来ているのでしょうか。 MTBのライドはロードよりも物を落としやすいですよね。

ジッパーを引っ掛けやすいようにリングが付いているのもポイント

便利な反面突き出た木の枝なんかに引っかかりそうな気もしますが、ロードで使う分には問題ないと思います。

抜群の着心地

身に纏ってまず他のジャージと違うな、と思うのが着心地の良さです。

とにかくフィット感が良い。言葉で表現するのが難しいですが、生地が肌に吸い付くような着心地

7meshのサイズチャートとRaphaのサイズチャートを比較した結果、私のサイズとしてはSが適切だとわかったので、Sをオーダー。

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身長183cm、体重67kgの私がSサイズを着ると見た目かなりピチピチに見える(サイクルジャージとしては許容範囲のフィット感なので特に問題はなし)のですが、見た目に反してキツい感じは全くなく、むしろ動きやすさすら感じるほど。

なんならこのままベッドに入ってしまいたい…そう思わせるぐらい抜群のフィット感があります。

同じくジャージを着用して試走していただいたzerocycleさんも「今までのジャージでは感じたことのないフィット感ですね」と仰っていました。

私の勘違いではないレベルでそうなんだということでしょう。

このQUANTUM JERSEYの着心地の良さを実現している要因の一つは、生地の組成がポリエステル100%であることでしょう。 ポリエステルは非常に耐久性が高く、速乾性に優れるのに加え、非常に肌触りが良いという特徴があります。

私の所持している他の夏用ジャージを見ると、ポリエステルに加えライクラ(エラスタン)を含むものが多いです。

イクラは伸縮性に富む素材のため、部分的・または分散させて組み込むことでジャージ全体の伸縮性を上げているのでしょう。

一方でQUANTUMは100%ポリエステルなので、ポリエステルが持つ肌触りの良さを強く感じるということかもしれません。

ポリエステルは強度が高い分伸縮性に劣りますが、それほど着心地の悪さを感じないのは以下2点の工夫によるものと考えられます。

人間工学に基づいた立体裁断

肩周りに三角形に線が入っているのがわかりますでしょうか?

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人間の筋肉・骨格の形に合わせて布を縫い合わせているため、このような線ができています。 このため通常のTシャツと同じように畳もうとしてもうまくいきませんが、いざ着てみると身体の動きに非常にフィットするようにできているというわけです。

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直立の状態で背中側を見ると生地が弛んでいますが、これはロードバイクに乗るときの姿勢に合わせたカッティングになっているから。 前傾姿勢になって初めて身体にフィットするように作られているわけです。

カニカル・ストレッチ

日本の7mesh公式サイトのQUANTUM JERSEYのページに「メカニカル・ストレッチ」という見慣れない単語が載っていました。

www.sun-west.co.jp

どうやらこのカニカル・ストレッチがジャージの伸縮性に一役買っているようです。

日本語で調べてみたのですがいまいちヒットしないので、英語で検索してみるとそれらしき生地素材の販売サイトがヒットしました。

www.homecrafttextiles.com.au

Mechanical stretch is a fabric that has stretch properties but spandex or other stretch yarns are not used when they are woven. The stretch is usually created in the finishing process, where the high twist polyester yarn once woven has a small amount of stretch which gives in garments.

説明文をまとめるとこんな感じでしょうか。

  • カニカル・ストレッチは伸縮性を持つが、スパンデックス(ライクラのこと)や他の伸縮性のある素材を使っていない。
  • ストレッチ(伸縮性)は仕上げ工程において加えられる。
  • 強く拗じったポリエステルの糸が少量のストレッチを衣服に与えるようになる。

つまり、ポリエステルをめっちゃツイストすることによって生まれた素材は若干の伸縮性を持ち、その作業を施した素材をメカニカルストレッチと呼んでいるということですね。

QUANTUMがポリエステル100%なのに着心地が良い理由がものすごくよくわかった気がしました。

なぜライクラを利用しないのか?

これは公式サイトにも書かれていることですね。

イクラは親水性が高い素材です。 つまり、一度水に濡れてしまうとなかなか乾かないということ。

夏は汗を沢山かくので、快適性という尺度ではできればライクラはあまり使いたくない素材なのかもしれません。

一方でスポーツウェアとしての機能性を考えると伸縮性は重要です。 それが少量のライクラを生地に利用するサイクルウェアが多い理由なわけです。

しかしイクラを利用しなくても伸縮性を担保できるとしたらどうでしょうか?

そこに一つの答えを出す素材がメカニカル・ストレッチであり、まさにQUANTUM JERSEYはそれを利用しているからこそライクラを利用する必要がないということでもあります。

優れた耐紫外線性能

このQUANTUM JERSEYはUPF 50+であり、これは衣類のUVカット性能としては最高値です。

UPFはUltraViolet Protection Factor(紫外線保護指数)の略で、UVカットの世界的基準値になります。

数値は高いほど紫外線を透過しない(つまり吸収する)ことになり、日焼けしにくいということになります。

例えばUPF 50であれば、その衣類を身に纏った場合、地肌を直接紫外線に晒したときよりも同じ日焼けにかかる時間が50倍になることを表しています。

つまり直射日光の下に10分いることでできる日焼けは、UPF 50の衣類を着ている箇所においては10*50=500分かかるということです。

50+はその数値が50よりも上であることを示しています(50よりも大きい数値の場合は全て50+に丸められる)。

ちなみにポリエステルは元々高い対紫外線性能を持つということなので、組成をポリエステル100%にすることはQUANTUM JERSEYのUPFに大きなアドバンテージを与えていることになりますね。

洗濯におけるパフォーマンス

前述したようにQUANTUM JERSEYはポリエステル100%のため、強度が高いです。 したがってガシガシ洗濯していくことができます。

念の為洗濯表示を見てみましょう。

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  • 水温30℃を限度に、洗濯機で洗える
  • 漂白不可
  • ハンガーを使って吊り干し
  • アイロン不可
  • ドライクリーニング不可

洗濯機でガシガシ洗ってハンガー干しでOKですね。

漂白剤はNGです。カラー展開としては白がありますが、絶対に利用しないようにしましょう。

また、アイロンもご法度です。ポリエステルは可燃性が高く容易に燃えて(溶けて)しまいます

そもそもサイクリングジャージにアイロンかける必要はあるのか?いや、ないだろ…という気もするけど、猫を電子レンジに入れる人がいるくらいだからする人が出てきてもおかしくはないのか?

まとめ

QUANTUM JERSEYについてまとめてみるとこんな感じです。

  • 便利で使い分け可能な2つのジップ付きポケット
  • シンプルなデザイン、さりげなく存在感を主張するワンポイントロゴ
  • カニカル・ストレッチのポリエステルを使うことによる速乾性と伸縮性の両立
  • UPF 50+の高い対紫外線性能
  • 洗濯における耐久力の高さ

最高の技術と素材で優れたデザインのウェアを作る。そんなアークテリクスの魂を受け継ぐサイクルアパレルブランドである7mesh

このQUANTUM JERSEY一つとってみても、その魂を体現すべく様々な工夫がなされていることがわかりました。

実際に長距離を走ってみたレビューは後日アップしたいと思います(お約束)。

次回はメリノウール製のAshlu Merino Jerseyをレビューします。