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ライブハウスでFor Tracy Hydeを撮影してきた 〜ライブハウスで明るく綺麗に撮影する方法〜 その③

前回 weekendcycler.hateblo.jp

前回の最後に、ライブハウスにて綺麗な写真を撮影するにはまだまだ足りない要素があると言いました。 今回はそのテクニックについて解説していきます。

おさらいすると、ライブハウス撮影の難しさは「暗さ」「被写体が動く」ことにあります。

これまでの記事では、そういった環境で明るく綺麗に撮影するには以下を実施する必要があると述べました。

  • F値をなるべく小さくし、カメラ内部に光を多く取り込めるようにする(最小F値が低いレンズだとなお良し)
  • F値を小さくすると被写界深度(ピントの合う範囲)が浅く(狭く)なるため、置きピンしてから連射する(数撃ちゃ当たる作戦)ことでピントの合った一枚を撮影する

しかしこれだけでは、以下のような写真が撮れてしまうことがあります。

DSC03594

所謂ブレという現象です。

ブレ

ブレには2種類あります。

  1. 手ブレ: 撮影時に撮影者が動くことによって発生するブレ。手ぶれ補正機能の利用またはしっかりとカメラを固定する(脇を締めてホールドする、三脚を利用するなど)ことである程度抑制可能。
  2. 被写体の動きによるブレ: 被写体が激しく動くことによって発生するブレ。カメラの設定によってある程度抑制可能

1.は撮影の瞬間にカメラをしっかりと固定することである程度回避可能ですが、人間は生き物であるため完全に静止することはできません。

止まっているつもりでも心臓は脈打っているし、呼吸するから胸は上下するし、重いカメラを持つ手は常に小刻みに震えています。

また、仮に手ブレをどうにかできたとしても「被写体の動きによるブレ」は自分ではどうにもなりません

以下ではこのブレをどうやって抑制していくか、その方法について説明します。

ブレを抑制する方法①: 被写体の動きが小さいタイミングを狙う

当たり前の話ですが、被写体の動きが激しくないときにシャッターボタンを押して撮影された写真には殆どブレが出ません。

例えばボーカルがマイクに向かって歌っている状態など、(見た目)ほぼ静止しているような状態ですね。

20190216-DSC03622

とはいえ、自分の好きなタイミングで被写体に止まってもらうことはほぼほぼ不可能ですし、そんなことお願いするのは本末転倒というか失礼。 むしろ動きのある中での一瞬を撮りたい場合はこの方法では実現できません。

ブレを抑制する方法②: シャッタースピードを速くする

これが今回の一番重要なポイントです。

被写体の動きによるブレが出てしまう原因は、シャッタースピードが遅いため。これが全てです。

シャッタースピードとは?

ここでカメラの露出設定のうち最も重要なパラメータのうちの一つである「シャッタースピード」について説明します。

以下のスライドにもあるように、露出とはすなわちカメラの撮像素子に対して光を照射することを指します。

この「露出」方法によって撮影される写真は千変万化し、カメラにはその「露出」方法を制御する重要なパラメータがいくつか存在します。

それが、

の3つです。

F値はすでに以下の記事で詳しく説明しています。

weekendcycler.hateblo.jp

ついに今回はもう一つであるシャッタースピードについて説明する時がきました(本当は別の記事で説明する予定だった)。

シャッタースピードとはすなわち「撮像素子を露出させる時間」のことです。

上記のカメラの断面図には描かれていませんが、撮像素子とレンズの間には光を遮る板が存在します。 この板が所謂シャッターです。

撮影者がシャッターボタンを押すことによってシャッターが開いて撮像素子が露出し、再び閉じることによって露出が完了します。

露出時に外部から撮像素子に照射された光によって1枚の写真データが生成されます。

つまり、このシャッターが開いてから閉じるまでの時間が「シャッタースピードというわけです。

シャッタースピードが遅い、つまり長いとどうなるか?ここまで読んできた皆さんならわかるのではないでしょうか。 シャッタースピードが長いということは、シャッターが開いてから閉じるまでの時間が長い

つまり、撮像素子が露出されている時間が長いということになります。

もうわかりましたよね?シャッタースピードが長くなるほど、多くの光が取り込めるようになるのです。

え、じゃあ暗いところなら尚更遅くしたほうがええやん!と思いがちなのですが。。。 というか、実際オートモードだと暗いところではカメラはシャッタースピードを遅く設定します。

しかしここで思い出してください。シャッタースピードを遅くすると、ブレてしまうのです。 ここからはそのメカニズムについて説明していきます。

例えばシャッタースピードが0.5秒になっている状態を例に話を進めましょう。 これは、ライブハウス程度の暗さでオートモードに設定した際、容易にカメラによって勝手に設定される値です。

例えば陸上のウサイン・ボルト選手は100mを9秒58で走れる記録の持ち主です。 0.5秒でどのくらい進んでいるかというと、(100/9.58)*0.5≒5.23mも移動することになります。 0.5秒で5mは凄まじいスピードですよね。

では0.5秒で5m移動するウサイン・ボルト選手を、シャッタースピードを0.5秒にした固定カメラで撮影しようとするとどうなるか。

俯瞰を図で表現してみました。

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高速で動く点ボ

高速で動く点ボ…じゃなかった、ウサイン・ボルト選手は、上図のように、固定されたカメラの前をシャッターが開いてから閉じるまでに5m進みます。 したがって、ウサイン・ボルト選手が左から右に移動する様が残像のように写真に写ってしまいます。

これがブレの正体です。

ここでシャッタースピードを1/1000秒にしたときのことを考えてみましょう

ウサイン・ボルト選手が1/1000秒間に移動可能な距離は0.01m、つまり1cmとなります。

故に残像は1cmの長さしか発生しないため、写真で見ても殆ど目立たなくなるわけです。

つまり、シャッタースピードを速くすることによって被写体が動いたときのブレが小さくなるということになります。

ちなみに、以下の写真ではシャッタースピード1/30秒かつ手ぶれ補正機能併用にて撮影しています。 20181216-DSC01603 これは殆ど動きがない状態で撮影したためウサイン・ボルト選手級のシャッタースピードは必要ありませんが、激しく動くシーンを撮る場合は必要になってきます。

一方で、敢えてブレを表現として残し、ライブの臨場感を出していくというスタイルもアリです。 今回は敢えて「ブレずに撮る」ことを焦点に当てて説明しているに過ぎないのです。

さて、今回はシャッタースピードを速くするとブレを軽減できることについて説明しました。

一方で途中で言及したように、シャッタースピードを速くすると露出時間が減るため、光を多く取り込めなくなってしまうことについて言及したと思います。

次回はそういった問題についてどのように対応しているか説明します。

おそらく次回が最後かな?