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7meshのサイクルウェア(夏物)をレビューしてみた part3 - ASHLU MERINO JERSEY MEN'S

前回、前々回と2回にわたってメリノウールという素材について説明してきました。

weekendcycler.hateblo.jp

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今回はそのメリノウールを素材に使った7MESHのサイクルジャージ「ASHLU MERINO JERSEY」のメンズモデルについて紹介していきます。

7MESHはカナダ発のサイクルウェアメーカーです。

アウトドアウェア界では世界最高峰の技術を持つと言われるARC'TERYXの創設メンバーが始めたブランドで、その高い技術力とマインドを引き継ぎ数々の素晴らしいサイクルウェアを生み出しています。

詳しくは以下の記事を御覧ください。

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まずはジャージの外見から見ていきましょう。

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www.sun-west.co.jp

エンブレムは刺繍

7MESHの代名詞である7とMを組み合わせた左胸のマークはポリエステル製のQUANTUMではプラスチックのような素材でした。

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今回紹介するASHLU MERINOでは刺繍になっています。

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このあたり、天然繊維であるメリノウールの雰囲気や強度に合わせたデザインにしているといったところでしょうか。

使い分け可能な2つのジッパー付きポケット

QUANTUM同様、ASHLU MERINOも腰部分の両側にジッパー付きのポケットを備えています。7MESHの夏用ジャージ全てに共通するデザインパターンですね。

これによって右側は財布、左側はスマホ、といった形で使い分けが可能。非常に便利です。

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iPhone 6sが余裕で入るくらいの大きさ。

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引っかかりそうで危ない気もする輪っかの大きな紐ですが、その分掴みやすく信号待ちのなどのストップ&ゴーでもストレスなく中の物を出し入れできます。

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腰部の反射材

バックポケットの両サイドに反射材が付いています。

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左サイドの反射材。

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実際にジャージを着てみると反射材の部分は側面まできていることがわかります。

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後方からサイドにかけて反射できるように位置づけられているようです。

ハイブリッド素材の利用による相乗効果

ASHLU MERINOの特筆すべき点は生地としてハイブリッド素材を利用していること。

ハイブリッド、それはつまり異なる素材を組み合わせているということ。

一体何をどう組み合わせているのか、そしてそれによってどのような効果が生み出されているのか。

それを明らかにするために、ASHLU MERINOの組成を見てみましょう。

天然繊維と化学繊維のハイブリッド

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  • 身頃: 89% ウール, 11% ナイロン
  • 対照: 77% ナイロン, 23% エラステイン

身頃はウールとナイロンを組み合わせた生地になっています。

ウールは天然繊維、一方でナイロンは化学繊維。

したがってASHULU MERINOの生地は天然繊維と化学繊維のハイブリッドになっているというわけです。

天然繊維の弱点を化学繊維でカバーしている

ところで身頃って何?ということで調べてみると。。

衣服の、そで・えり・おくみなどを除いた、体の前面・背面を覆う部分。

ということで、要は体の前面・背面を覆う部分らしいです。

おそらく私の持っているジャージでいうと赤色の部分かな?

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バックポケット含む色が黒い部分は明らかに手触りが違うので、こちらが「対照」と書いてある部分でしょう(定義ではここも身頃に入りそうだけど)。

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ASHLU MERINOという名なので、ウール部分にはメリノウールが利用されているのだと思います。

そしてナイロンは当ブログでは初めて出てきた素材ですね。ポリエステルと同様化学繊維の一種になります。

特徴は以下の通り。

  • 吸湿性が低く、乾きが早い
  • 弾力性があり、シワになりにくい
  • 伸び縮みしにくく、型崩れしない
  • 丈夫で、引っ張りや摩擦に強い

まとめると乾きやすい(水を吸いにくい)、丈夫、変形に強い、というところでしょうか。

前2つの特徴(乾きやすい、丈夫)はメリノウールと相反する性質ですよね。

どうやらこのASHLU MERINOはウールとナイロンを組み合わせることでウールの弱点を補うようになっているのではないかと予想できます。

ちなみに公式サイトの説明によると。。

アシュル・ペアと呼ばれる非対称ストレッチ・ナイロンと滑らかな17.5ミクロンのメリノウールのハイブリッド素材を採用し、クラシックなウール・ジャージーの近代化を図ります。

ということで、生地の全体がメリノウールとナイロンを組み合わせた「アシュル・ペア」という素材によって作られているようです。

これによって、メリノウールの弱点であった「保水しやすい、乾きにくい」、そして「耐久性に難あり、毛玉ができやすい」といった弱点を、ナイロンのメリットで打ち消すことで(化繊が闊歩している今の世の中ではある種古い)メリノウールで作られたウェアの近代化を図ろうとしているということでしょう。

ASHLUって何?

ちなみにこのASHLU MERINOの代名詞になっており、「アシュル・ペア」として素材名にも登場している「ASHLU」って何なの?と思って調べてみたところ、どうやらカナダにある川の名称のようです。

en.wikipedia.org

シュルクリークはカナダ、ブリティッシュコロンビア州の短くて速い小川です。アシュルクリークはスカーミッシュ川の支流で、スカーミッシュの北西約24.3kmに位置します。(日本語訳)

ということで7MESH生誕の地であるカナダ、ブリティッシュコロンビア州スカーミッシュの近くを流れる川が由来になっているみたいです。

確かに繊維形状というのは流れる川に見立てることもできる気がしますよね(この川を選んだのはきっともっと深い理由があるんだろうけど)。

いくつもの小川が集まって大きな川になる様は、繊維が幾重にも折り重なって更に太い繊維になっていくのにすごく似ています。

バックポケット部分は素材を変えて強度を担保

バックポケット部分が「対照」部分であるとして話を進めていきます。

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ナイロンが77%、エラステインが23%という組成から見てもわかるように、ポケット部分は強度をしっかりと意識した組成になっているということがわかります。

メリノウールをポケット部分に使用した場合、その性質からポケットが下にだらーんと下がってしまうため、伸び縮みしにくいナイロンを利用することでそれを防いでいるということになると思われます。

また、ポケットという性質上何度も出し入れすることを考慮して摩擦に強い素材を…という観点からナイロンを選択しているのでしょう。

そしてエラステイン、つまりポリエチレンを2割程度含んでいます。ポリエチレンは乾きにくいが伸縮性の高い素材です。

ポケットをすべてナイロンで作ってしまうと伸びにくいがそれ故にモノが出し入れしにくくストレスになってしまう。しかしメリノウールは摩擦に弱いので使えない。。そんな理由からエラステインを選んだのではないでしょうか。

横糸に多くエラステインを含むような編み方をすればポケットとしての使い勝手は損なわずに済みそうですよね。

エラステインを含むことで速乾性の低下が気になるところですが、そもそもナイロンを8割使っているのでも問題ないという考えだと思います。

肌触りの良さ

利用しているメリノウールの太さは17.5ミクロンということで、ランクとしては上から二番目のSuperfine Merinoになります。

太さ(ミクロン) 名称
< 15.5 Ultrafine Merino
15.6 - 18.5 Superfine Merino
18.6 - 20 Fine Merino
20.1 - 23 Medium Merino
> 23 Strong Merino

実際着てみると肌触りが非常によく、これはメリノウールの表面が撥水性を持っている(乾いている)からだけではなく、繊細なSuperfine Merinoで生地を作っていることに他ならないからでしょう。

優れた耐紫外線性能

このASHLU MERINOの紫外線遮蔽率はQUANTUM同様UPF 50+であり、衣類のUVカット性能としては最高値です。

UPFはUltraViolet Protection Factor(紫外線保護指数)の略で、UVカットの世界的基準値になります。

数値は高いほど紫外線を透過しない(つまり吸収する)ことになり、日焼けしにくいということになります。

例えばUPF 50であれば、その衣類を身に纏った場合、地肌を直接紫外線に晒したときよりも同じ日焼けにかかる時間が50倍になることを表しています。

つまり直射日光の下に10分いることでできる日焼けは、UPF 50の衣類を着ている箇所においては10*50=500分かかるということです。

50+はその数値が50よりも上であることを示しています(50よりも大きい数値の場合は全て50+に丸められる)。

洗濯における耐久性

タグに付いた洗濯マークは以下の通り。

  • 液温は30℃を限度とし、洗濯機で洗濯ができる
  • 塩素系及び酸素系漂白剤の使用禁止
  • つり干しがよい
  • アイロン仕上げ禁止
  • ドライクリーニング禁止

基本的には洗濯機で洗い、つり干しするという他のサイクルジャージと同様の運用で大丈夫そうです。使用頻度の高いサイクルジャージなのでメンテナンスが楽なのはありがたいです。

ウールは比較的デリケートな素材ですが、ナイロンと組み合わせることで強度が上昇しているということなのかもしれません。

一方でアイロンは不可、液温は比較的低めです。

スーツやスラックスなどの多くはウール製であり、アイロンで仕上げることも多いですよね。したがってウール単体ではそこまで熱に弱くない。

一方でナイロンは熱に弱いため、液温は低めかつアイロン仕上げは禁止になっているのでしょう。

またウールは羊の毛ということもありタンパク質で構成されています。酸素系漂白剤はアルカリ性なので、タンパク質でを洗い流してしまうため使用できません。塩素系漂白剤は漂白力が強すぎるためNGです。

実際に利用してみて

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いやー、このジャージめちゃくちゃ良いです。

7MESHの夏用ジャージは全部で三種類あり、全て着用してみましたが私はこのASHLU MERINOが一番好きです。

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9月に乗鞍で2,000mほど一気に登って大量に汗をかいたにも関わらず全く不快感はなく、通気性の高さによる高所・下りでの汗冷えもウインドブレーカーを羽織れば全く問題なく。

非常に快適にサイクリングすることができました。

一方でQUANTUMを着ていた友人はウインドブレーカーを羽織っていたにも関わらず下りで冷えると漏らしていたので、このあたりメリノウールの断熱性が活きていたということでしょう。

確かにメリノウールの保温性と保水性を考えると、たしかに真夏の快晴時のロングライドやそこまで高所でもないヒルクライムなどはかなりしんどい気はします。

しかしそれ以外では積極的に使っていけるアイテムだという実感を持つことができました。素材がもたらすメリット以外の機能性を考えてもとにかくストレスのない作りになっていると感じます。

肝心の強度はどうなのか。

毎回洗濯機にてネットに入れてデリケートモードで洗っているにも関わらず表面に毛羽立ちが見られるようになってきました(着用回数は10回くらい)。

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しかし毛羽立っている箇所が首の右側など特定の場所に偏っていることから、これはカメラをたすき掛けにして走っているせいなのではないかと思いました。

ストラップが自然と生地を痛めてしまっていた可能性が高い。

ナイロンを加えて強度をあげているのだと思うのですが、やはり直接の摩擦には弱いのだと思います。このあたりは想定外の使いかたをしているので問題ないかなと思いますが、リュックなどを背負う方は注意したほうが良いかもしれません。

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まとめ

まとめるとこんな感じ

  • 7MESH定番の使い分け可能なダブルジップ付きポケット
  • サイドまでカバーするバックポケット横のリフレクター
  • 天然繊維と化学繊維のハイブリッド素材で天然繊維の弱点を補う
    • ウールの乾きにくさをナイロンの疎水性で軽減
    • バックポケットは化繊のみで構成、ナイロンを使うことで伸びにくくした
  • 高品質なメリノウールを使っていて肌触りが良い
  • 洗濯機で洗って吊り干しでOK

とにかく着心地がよく、長時間着ても快適さが持続するという点がとても気に入ってます。

まだ素材だけでなくバックポケットなど機能面でも使いやすい工夫がされておりライドの度に着て行きたくなるジャージです。

おすすめ。