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工場夜景の撮り方について語ってみた その②

前回に引き続き工場夜景の撮り方について語っていきます。今回はpart.2です。 weekendcycler.hateblo.jp

前回は工場夜景とは何かから始まり、工場夜景撮影には下調べが重要であると述べました。

part.2の今回は機材編ということで、工場夜景に持っていくべきアイテム3つについて紹介していきます。

三脚

工場夜景を綺麗に撮るためのアイテムのうち、1つ目は三脚です。 三脚は工場夜景に限らず夜景撮影にはマストの機材です。

三脚はその名の通り三本の脚で自立する台のことであり、台にカメラをセットすることで、 カメラを完全に固定させた状態で写真を撮影することができるようになるツールです。

三脚が夜景のマストアイテムである理由は以下の2つです。

これらについて順に説明していきます。

暗いということはつまるところ光が足りないということ。

光が足りない場合、カメラ露出設定を以下のように変更することで明るい写真が撮影することが可能です。 (それぞれの理由については、リンク先にあるライブハウスでの撮影方法の記事を御覧ください。)

しかし今回、F値を小さくすることはできません。

なぜなのか。

もう何度も口を酸っぱくするほど言っていますが、F値を小さくするということは、ピントの合う面の範囲が狭くなるということ。

今回撮影するのは夜景、つまり風景写真なので、逆にF値を大きめに設定し、手前から奥までしっかりとピントが合った写真を撮るのがセオリーになります。

特に工場のような複雑な構造を持った建造物であれば尚更それが持つ立体構造の輪郭がしっかり残るため、よりシャープで人工的な印象を与えることができます。 (以下、「表現④: パンフォーカス」参照) weekendcycler.hateblo.jp

逆にF値を小さくしてしまうと、細部がぼやけてしまって全体として締まりのない絵になってしまうというわけです。

したがって、工場夜景では「シャッタースピードを遅くする」もしくは「ISOを上げる」により対応するしかありません。 これらには以下のデメリットがありました。

  • シャッタースピードを遅くすると、被写体の動きor撮影者の身体の震えによってブレてしまう
  • ISOを上げるとノイズが出てしまう

実は工場夜景においては、三脚を使うことによってこれらの問題を解決することができてしまいます。

どういうことかというと、

そもそも工場は静物(静止したままで活動しないもの)であるため、被写体が動くことによるブレは全く考えなくてよいです。

更に三脚を利用することでカメラ自体が固定されるため、身体の震えによるブレも気にしなくてよくなります

以上から、三脚を利用するとシャッタースピードを遅くすることで発生するデメリットが全てなくなるため、 好きなだけシャッタースピードを遅くすることができることになるというわけです。

つまり好きなだけ光を取り込めることになるため、ISOを上げて電気的に信号を増幅する必要もなくなります

したがって、暗い場所で静物を撮影する場合、三脚を利用するとノイズを極限まで抑えつつピントが奥まで合った明るい写真が撮れる、ということになります。

三脚がいかに夜景撮影に重要であるかおわかりいただけたでしょうか?

三脚選びについてはログカメラ様の以下の記事が大変参考になります。 logcamera.com

望遠レンズ

2つ目のアイテムは望遠レンズです。

望遠レンズとは即ち、「遠くの風景を切り取るレンズ」です。 もっと簡単に言うと、望遠鏡のように遠くを写すことができる、また近距離にある被写体を大きく写すことができるレンズということになります。

なぜ望遠レンズが良いかというと、工場は撮影地点から遠い場所にあることが多いためです。 (前回のブログで工場夜景の撮影スポットが紹介されているサイトについて紹介しましたが、このサイトを見られた方は「意外と離れてるところにあるんだなぁ」と思った方も多いかも)

「え、別トリミングすれば良くない?」

と思う方もいると思うのですが、トリミングすると画質が低下してしまうという問題が発生します。

なぜ画質が低下するかを絵で説明してみます。

カメラの位置を変えずに、少し離れた場所にある丘に建つ家を撮影するシチュエーションを考えてみましょう(カメラが家よりでかいとか言わない)。

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撮影シチュエーション

ここでカメラの撮像素子は4x3の12画素(そんなのありえないけど)、 使うレンズは望遠レンズ(遠くを切り取るレンズ)と広角レンズ(広い範囲を写すレンズ)の2本とします。

望遠レンズで撮影した写真は以下になります。

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望遠レンズで撮影した写真

正方形に区切られた一つのマスが一つの画素に対応し、一つの画素に一つの色が対応します。

したがって、望遠レンズで撮影した方の写真の家は9マスの中に含まれるので9色で表現されることになります。

一方で、同じ地点から広角レンズで撮影した写真は以下のようになります。

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広角レンズで撮影した写真

望遠レンズの写真と同じ構図になるようにトリミングする場合、ここから点線部分をくり抜いて拡大することになります。

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点線部分をトリミングして拡大する

こちらが拡大された写真になります。

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トリミングしてから拡大された写真(広角レンズで撮影)

この場合、家は1マスの中にしか含まれないため1色で表現されることになります。

以上から、写真の一部分をくり抜いた(トリミング)ものとそうでないものを物理的に同じ大きさにして並べて見た場合、トリミングしたものの方が表現される色の数が少なくなってしまうということになります。

色の数が少なくなるということは、きめ細かいグラデーション表現や明暗が失われてしまうことを意味しており、これではせっかくISOを下げて三脚で撮っているのに台無しになってしまうというわけです。

よって、撮影地点から離れた場所にあるものを綺麗に撮りたい場合は望遠レンズを使うのがベストです(少なくともトリミングしなければ望んだ構図にならない場合は)。

センサーがフルサイズのカメラにおいては、一般的に焦点距離が55mm程度よりも大きいレンズのことを望遠レンズといい工場夜景では最低でも焦点距離が200mmのレンズを用意しておくことをおすすめします

クロスフィルター

次に紹介するのは、マストとはいかないまでもあると写真の表現の幅が広がるアイテムである「クロスフィルター」です。

クロスフィルターは、レンズの前面に取り付けることで、点光源(ライトなど、点状の光を発するもの)を交差状の光として煌めかせることができるフィルターになります。 代表的なものは二本の線が直角に交わった十字型ですが、8本の筋が等間隔で出るサニークロス(太陽の光条の形に似ているため)、6本の筋が出るスノークロス(雪の結晶の形に似ているため)などもあります。

Kenko レンズフィルター R-サニークロス 77mm クロス効果用 377222

Kenko レンズフィルター R-サニークロス 77mm クロス効果用 377222

Kenko レンズフィルター R-クロススクリーン 77mm クロス効果用 377208

Kenko レンズフィルター R-クロススクリーン 77mm クロス効果用 377208

Kenko カメラ用フィルター PRO1D R-クロススクリーン (W) 77mm クロス効果用 327715

Kenko カメラ用フィルター PRO1D R-クロススクリーン (W) 77mm クロス効果用 327715

Kenko レンズフィルター R-スノークロス 77mm クロス効果用 377215

Kenko レンズフィルター R-スノークロス 77mm クロス効果用 377215

このフィルターを工場夜景のように点光源が多い夜景で利用するとクロスが大量に構図の中に入ってくるため、より綺羅びやかな印象になります。

並べると一目瞭然ですね。

  • サニークロスなし 20190210-DSC02601-2

  • サニークロスあり 20190210-DSC02599

一見綺麗なサニークロスですが、上のように密集していると逆にごちゃごちゃして見づらくなってしまいます。 そういった場合は敢えて広角側で撮影してスッキリとした図にするのも表現の一つです。

20190210-DSC02598

そもそもクロス自体が自然に出た光ではない(そもそもライト自体が人工物なので何とも言えないが)ため違和感があるという場合は利用しないという選択肢もありだと思います。 全ては自分の写真をどう表現したいかです。

さて、今回は工場夜景撮影に必要な以下のアイテムについて説明しました。

  • 三脚
  • 望遠レンズ
  • クロスフィルター

次回はいよいよ工場夜景特有の撮影テクニック(露出パラメータ制御)について紹介していきます。