Weekendcycler

Cycling, taking photographs, and drinking a cup of coffee on the weekend

自転車で残雪の浄土平・磐梯吾妻スカイラインを走ってきた

朦朧とする意識の中、静寂を切り裂く騒音の主の息の根を止めにかかる。

目覚まし時計の液晶に表示された時刻は午前3時半、布団に入ったのが0時ちょっと前くらいだったから、3時間半くらい眠ったことになる。

頭と歯が痛い…前日の50kmほどのポタリングの最中に休息を怠ったせいか寝る前から体調が芳しくなく、寝たら治るだろうと思っていたが全く回復していなかった。

今日は待ちに待った残雪の浄土平を自転車で登る日だというのに。。

最後に浄土平を自転車で登ったのは2年前だった。天候がベストと言える状態ではなかったにもかかわらずその圧倒的に美しい景色に衝撃を受け、ベストな状態でリベンジしたいとずっと願っていた。

weekendcycler.hateblo.jp

1週間ほど前からSNSで浄土平に行くことを告知していたこともあり、これで「いけませんでした^^;」では格好が悪いというのと、

何より天気予報により降水確率0%、かつ十分な残雪があるという前情報があったためこの機会を絶対に逃したくなかった。

ということで、回復のためにダメ押しでもう1時間寝ることにした。始発は逃してしまうが、致し方ない。(朝早ければ早いほど空は霞のない澄んだ綺麗な青空となるため、始発で行くのが最も良い)

もう一度目覚めると頭痛と歯痛も多少はマシになっていた。 重い体を起こして出発の準備をしていると、少しずつ体に活力が湧いてくる。プラス1時間の睡眠はなかなか重要であると実感。

最寄り駅で自転車を輪行袋に詰め、東京駅へ向かい、券売機で最後尾の席を確保し、いざ搭乗。

新幹線の中では安心して休みたかったので、座席の後ろにスペースが有り荷物を置くことができる最後尾の座席をいつも選んでいる。

と、ここでちょっとしたトラブルが。

自分の席の後ろのスペースを見ると、すでにゴルフバッグが2つ置いてあり置くことができない。。

やれやれだ。一体何のためにこの席を取ったと思っているのか。。

とりあえず近くの持ち主っぽいおじさんに話しかけて交渉し、場所を開けてもらう。

これでなんとか自転車を自分の近くに、かつ固定して置けたのであとはスマホで目覚ましをセットして寝るだけである。

1時間半くらい乗っていると福島駅に到着。この頃には体調もだいぶ回復していた。

浄土平は普通に登ってもかなりキツい峠なので、いけるか不安であった(自分の場合はさらに一眼を背負わなければならない)が、

これならなんとかいけるだろうな、というくらいまでは回復。

約2年振りの福島駅は特に変わったところも見当たらず。コインロッカーもがら空き。

ひとまず輪行袋や着替えなど走る際には必要のないものをロッカーに突っ込み、自転車を組立てる。 f:id:weekendcycler:20180425015928j:plain 前回と同じく駅前のモニュメントの前で撮影。このバイクも譲り受けてからもう5年経ち、色々なところに行ったなとしみじみ。。

走り出してまずはコンビニに行く。飲み物を買うというのもあるが、今回最も重要なポイントがここにある。

そう。。。

f:id:weekendcycler:20180425020033j:plain で、でたーwwwSDカードを忘れ奴www

いやー危ない危ない。なんとなく忘れた気がして、福島駅前でカメラのスロットを確認していたおかげで気づくことができた。なおモニュメントの写真はスマホで撮影している。

それにしても、いざ絶景に出くわしたときにSDカード無いとか、笑える…またこのキツい坂登るのかと。

そして下って登ったあとも絶景がある保証はない。時間は残酷である。

ゾッとしつつも何枚か試し撮りして問題ないことを確認し、磐梯吾妻スカイラインに向けて走り出す。

今回も、2年前と同様に SONY α7 II ILCE-7M2 + SONY Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS SEL1635Z + Kenko PLフィルター Zeta で臨む。浄土平の雄大な自然を撮るには、やはり超広角域が相応しい。 また快晴が予想されることから、空をより青く撮ることのできるPLフィルターを持っていく。

PLフィルターの効果についてはこちらを参照してほしい。 aska-sg.net レンズも16~200mmくらいまでカバーできるように揃ってきたので、そろそろ高画素機がほしいところ。。

今回はこれらの機材をリュックで持っていく。

ロードバイクとリュックは最悪の組み合わせということは自転車乗り誰もが知るところだろう。

荷物を背負った状態で前傾姿勢を取ることにより、重さが上半身にかかり続けることになり、一言で言うと腰が死ぬ。

そこに更に坂が加わることによって腰が死ぬ。つまり腰が死ぬということである。

それなのにリュックを選んだ理由は、機材を振動や転倒による破損から守るためである。

今回のライドのように高々50kmであれば、トレーニングと割り切れば何ら問題ないと自分は考える。

また、今回は初めてこいつを使うことになる。

リュックの肩紐にカメラを固定するためのアイテムである。 旅先でシャッターチャンスを逃さないためにも、重視したいのが速射性。 驚くべき光景を目にしてからカメラを構えるまでの時間はなるべく短くしたい。

そういった理由で、これまでの撮影では絶景ポイントに突入したらリュックからカメラを出し、カメラを身体の前にたすきがけにして走行する、という方法を取っていたのだが、如何せん具合が悪い。 というのも、ストラップをきつく締めてもカメラが揺れてしまいモーメントが発生し非常に走り辛く、カメラが前側に垂れ下がる形になるため膝にベチベチあたって非常に鬱陶しい。 またこれらに煩わしさを感じ集中力が低下し、事故が発生しやすくなるというリスクがあると感じていた。

そういった経緯からカメラをすぐ手に取れる位置に固定できる方法があれば…ということで見つけたのがこのアイテムである。

固定方式はビンディングペダルクリートと似たようなシステムになっている。 リュックの肩ベルトにビンディングにあたる部分をセット、カメラ側にクリートにあたる部分をセット。 DSC09966

こいつを使うと、肩ベルトにこのような形でカメラを固定できる。 f:id:weekendcycler:20180521141326j:plain

ガッチリと固定されるためブレることもないし、落ちる心配もほぼない。 落ちるとしたら撮影中なので、ストラップを首にかけた状態で固定しておくのが望ましい。

一見完全無欠のように見えるこのアイテムだが、実はちょっとした問題が。

レンズが下向きになるので、前傾がきついセッティングで乗っていたり長いレンズを使っていると膝にレンズが当たる。

かく言う自分も前者で、150mmのステムを使うことでフォームが前傾気味になっているため、上記の16-35 F4が膝にあたりまくっていた(とは言えちょっと擦るレベル)。

しかしアップライトで乗っている分には全く問題ないし、そもそも自転車でバズーカ級のレンズを持っていくことなんかあるのだろうか…いや持っていきたいと思ったことはあるけど^^;

ともあれ、自分は問題ないと感じている。

福島駅をスタートすると、峠の入口までは緩やかな2%程度の傾斜が続き、峠に入ると一気に10%超えの坂が襲い掛かってくる。

その傾斜はときには15%にも達し、涙なしには登れない。

道の途中にある温度計を見ると27℃と出ていて驚き。確かに暑いがここまでとは。

頬を伝う汗が冷たく感じる。今日は辛い戦いになりそうだ。

だんだんと一眼を入れたリュックの重みが増すような錯覚に陥り、腰が悲鳴を上げ始める。

高湯温泉(唯一の補給ポイント)まであと3kmの看板が。歯を食いしばって踏む。

今年はブルベであれだけ坂登ったのに、全く踏めない。やはり激坂トレーニングは別にしないとダメか。。

そんなことを考えながらも一心不乱にペダルを踏んでいると高湯温泉に到着。

標高だとちょうど700mくらい、全行程の半分まできた。

磐梯吾妻スカイラインはここを逃すと水分補給&トイレが無いので注意。

絶景ポイントで撮影に集中するため、今のうちにしっかりと用を足しておく。これ重要。景色と尿意は待ってくれない。

消耗していたせいもあるが、自転車の置き方が雑すぎる。。 f:id:weekendcycler:20180425020007j:plain そして休憩所に入る前にBCAAを1パック飲んでおく。これで出る頃には多少マシになっているはず。

中でトイレを済ませてスポーツドリンクを購入。冷たいものが全身を駆け巡って染み渡り、生き返るような感覚。

10分くらい椅子に座って休憩して出発。だいぶ楽になった。

高湯温泉をすぎると激坂祭りは鳴りを潜め…といっても時折現れるつづら折りでいきなり15%とか出てきてビビる。

走りながら道端で休んでいる自転車乗りと会釈したり、車の中から幼児に激励の言葉を頂いたりしながらペダルを回していく。

うーん、腰にきてる。カメラの持ち方はもう少し考えたほうがいいかもしれない。

1000m地点を通過。 f:id:weekendcycler:20180521154234j:plain あと500mほど登ると森林限界に到達できる。

1200m地点あたりの路肩が広くなっているところで2人組の自転車乗りが休んでいたので、会釈して自分も自転車を路肩に寄せ補給食を食べる。 そろそろ食べないと最後の最後でスタミナ切れそうだなという気配がしていた。 スタミナが切れた状態では絶景の撮影に集中できないので、ここでしっかりと入れておく。

山の天気はすぐに変わる。休みすぎてはいけないという想いが再び自分の脚を動かした。 リュックは段々と重くなっていく。

そうしていくつかの角を曲がるとついに森林限界に到達。 この辺からカメラをクリップにセットして、走っては止まって撮影の繰り返し。

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ここからは絶景のオンパレード。カメラをリュックから取り出し、クリップに固定して走っては止まって撮影、を繰り返していく。

尚レンズキャップは外した状態で固定。いちいち外すのは面倒だし、レンズフードをつけていればフィルターが何かに触れて傷つく恐れもない。膝に当たるのもレンズフード。 (CPLが回しにくいという難点はあれど…)

クリップの性能にはかなり満足している。速射性が高い割には煩わしさがなく、非常に快適に「撮影withサイクリング」が実施できている。

それにしても素晴らしい景色。 以前は違って今回は完璧に晴れていて、ただただ圧倒される。速射性を活かしてどんどんシャッターを切っていく。

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おそらく浄土平で最も美しいと自分が感じているスポットにて。山肌の残雪と青空のコントラストが実に美しい。

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更に進むと有害なガスが噴出し続ける区間に突入する。道端の標識に「窓を開けないこと!」「停車しないこと!」という注意書きがあるが、窓もクソもない自転車はどうしようもないので口に手を当てて騙し騙し進む。

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先程の2人組が後ろから登ってきた。雄大な自然の中に自転車がひっそりと走っているというこの構図が自分はとても気に入っている。

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人間という小さな存在が、自転車を駆り仲間とともに自然が持つ圧倒的な力に抗っていく。

人間が生まれる遥か昔から存在している自然。ただ何も言わずそこに在るもの。

電気を発明し、自動車や飛行機、新幹線といった文明の利器が出現してもなお、自らその中に身を置き辛さを享受しようとするのはなぜなのか。

そうして初めてこの大地に生きている、生かされていることを感じるのからではないだろうか。

そんなメッセージが込められているように感じる。

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標高1500m近くにもかかわらず、広大な湿原が横たわっている。その雄大さはまさに高所の楽園、極楽浄土、浄土平。 日本とは到底思えない風景が広がっている。

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絶景撮影も終了し旅の終着点である浄土平ビジターセンターに到着。 看板が新しくなっており若干の虚しさを感じる。随分すっきりしてしまったなぁ。

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ここで休憩して豚汁をいただく。汗をかきまくった体に実に塩分が染みる! f:id:weekendcycler:20180425020532j:plain ベンチに座りながら写真を見ていると思わず笑みが溢れた。

その後、登りよりハードなんじゃないかと思える激しいダウンヒル(急&道悪い)をこなしてから新幹線で帰路につく。

弾丸自転車写真撮影は毎回行く行かないの葛藤があるものの総じて後悔はなく、それは今回も同じ。

今回は予想を遥かに超えて理想的な写真が撮れたと感じた。

走ったルートを貼っておく。

この浄土平は絶景すぎる割には公共交通機関からのアクセスがとても良いため、ぜひともおすすめしたいルート。

最後の一枚は、帰り際に撮ったものを。

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この記事を読んでくださった方へ。 自転車でとは言わないが、この絶景を体全身で(自転車の人は坂の辛さも含めて)実感していただくことを願ってやまない。