7meshのサイクルウェアをレビューしてみた CYPRESS HYBRID JACKET その①
前回は同7MESHのASHLU MERINO JERSEYについて紹介しました。
7MESHはカナダ発のサイクルウェアメーカーです。
アウトドアウェア界では世界最高峰の技術を持つと言われるARC'TERYXの創設メンバーが始めたブランドで、その高い技術力とマインドを引き継ぎ数々の素晴らしいサイクルウェアを生み出しています。
詳しくは以下の記事を御覧ください。
今回は7MESHの「CYPRESS HYBRID JACKET」のメンズモデルについて紹介していきます。
CYPRESS HYBRID JACKETとは
CYPLESS HYBRID JACKETは、7MESHのジャケットの中でもっとも薄く、軽く、携帯性に優れたジャケット(たぶん)。
サイクルウェアで言うところの、「折り畳んでポケットに仕舞えるウインドブレーカー」的な立ち位置のアイテムになります。
商品名に含まれるCYPRESSは、カナダのブリティッシュコロンビア州にあるサイプレス州立公園(またはその中のスキーリゾート、サイプレス山)に由来しているようです。
これだけ聞くと何故雪山(スキーリゾート)の名前をウインドブレーカーにつけたのかと疑問に思うところ(厳冬期ジャケットの方が適しているのでは?という)。
仕事でバンクーバーに滞在したことのある友人曰く、サイプレス山は獲得標高700m程度のちょうどよいヒルクライムスポット(もちろん冬季は除く)ということで、現地のサイクリストが足繁く通う場所だそうです。
ヒルクライムの下りではウインドブレーカーを多用するため、そこでトレーニングするサイクリスト向けに作られたジャケットと考えるとなんとなく納得がいきます。
そんなCYPRESSは乗鞍でも大いに活躍してくれました。
さて、これまでの記事でも紹介してきたように、ウェア設計から利用する素材まで異常なまでのこだわりを見せる7MESH。
その7MESHが繰り出すウインドブレーカーはいったいどんなシロモノなのか。
むしろウインドブレーカーと呼ぶのは失礼ではないのか?
HYBRIDとは何を意味するのか?
見ていきたいと思います。
ジャージポケットへのアクセスが容易
CYPLESS HYBRID JACKETは腰部の両側にベンチレーションを備えており、ジッパーを引っ張ることで開閉可能です。
ジャージ同様ジッパーの紐が大きめなので引っ掛けやすいです。
そしてこのベンチレーション、単に通風だけを目的としたものではないのがポイント。
そう、このベンチレーションから下に着たジャージのバックポケットを弄ることができるのです。
7MESHのお家芸であるジャージのジッパー付きポケットはもちろんのこと、ベンチレーション自体が縦長なので通常のバックポケットもアクセス可能です。
ジャージのポケット位置に合わせて設計された感が伺えます。
防風性と通気性のハイブリッド
防風性と通気性という一見相反する機能を同時に実現することの出来るハイブリットジャケットです。
公式サイトのこの文章を見るに、CYPRESS HYBRIDの"HYBRID"は防風性と通気性の両立という意味合いで使われているようです。
防風性と通気性と聞くと、一見相反する機能のように思えます。
これらの機能をCYPELESS HYBRID JACKETはどのように両立させているのでしょうか?
ウェアの性能を決める重要な要素は素材。
ということで組成を見てみましょう。
身頃
- ポリエステル 100%
対照
- ナイロン 78%
- エラステイン 22%
ASHLU MERINO同様身頃が「前面」、対照が「後面」であると考えると、この前後面での組成の違いが何らかの効果を生み出していそうですね。
公式サイトの説明文を見てみましょう。
And we made it with almost silent GORE-TEX INFINIUM™ Active front and arm fabric treated with a durable water-resistant finish, and a 4-way stretch back that allowed us to dial in the fit to keep things silent and streamlined throughout even the fastest descent.
前面のポリエステルはGORE-TEX INFINIUM™ Active, 後面はストレッチ加工ということで組成の通り伸縮性に富むエラステインが寄与していると思われます。
サイクリングはハンドルを掴むという特性上、雨が降っているときは腕が濡れやすいです。それを考慮し腕部分はDWRにしているといったところでしょうか。
防風・透湿の前面
前面はポリエステル100%です。
CYPRESSの前面にはGORE-TEX INFINIUM™ WINDSTOPPER®という素材が使われています。
GORE-TEX INFINIUM™ WINDSTOPPER®はGORE-TEXで有名なW. L. Gore & Associates, Inc.が提供している素材になります。
そんなGORE-TEX INFINIUM™ WINDSTOPPER®ですが、通常のGORE-TEXとは違いがあるようです。
防風(風を防ぐ、通さない機能)と透湿(内部の水蒸気を外部に発散する機能)は両方とも備えており、違うのは撥水なのか防水なのか?というところ。
撥水と防水を少しだけ詳しく書くとこういうこと。
- 撥水 -> 表面に付着した水を弾く
- 防水 -> 外部から水が入りこまない
え、撥水も表面に付着した水を弾くから結果的に水が入らないんじゃないの?と思うところですが、
撥水加工はシリコンやフッ素などで生地の表面をコーティングして撥水を実現させているのに対し、防水は生地自体が水を通さないように加工されているという点が違います。
したがって「撥水」は多量の水に晒されたり、コーティングが剥がれると水が染みてきてしまいます。
一方で「防水」は一切水を通さない生地になっているためにムレてしまういうデメリットもあります。
ストレッチ性を高めた後面
逆に後部はWINDSTOPPERを利用せず、ナイロンとエラステインを利用しています。
ナイロンは通気性が悪い素材です。故に防風性は高く、丈夫であり伸びにくいという性質を持っています。
ウインドブレーカーということで防風性を高めたいが、それだとライディングポジションをとった際に窮屈になってしまうことから、エラステインを含めて適度な伸縮性を保つことでその問題を解消しているのでしょう。
あれ、通気性は?
以上のことから後面は通気性はそこまで高くない(むしろ悪い)ということになりますが、公式サイトにある「防風性と通気性の両立」はいったいどこから来ているのか。
重要なことを忘れていました。そう、ベンチレーションです。
大きく空いたベンチレーションが通気性を高めている。これしか考えられません。
したがって以下のように防風と通気のハイブリッドを達成しているということになります。
- 風をモロに受ける前面はGORE®WINDSTOPPERを利用することで防風性を実現しつつも内部の汗は透湿
- 風を受けない後面はベンチレーションによる通気性を確保、かいた汗を発散
また以下のような工夫もされています。
- 腕部分はDWR(耐久性撥水加工)により水が染み込みにくい
- 背面はナイロンを利用することでウインドブレーカーに求められる防風性を担保しつつ、若干のエラステインによりライディング時の着心地の良さを実現
全ての面を同じ素材・同じ機能にするのではなく、適材適所で素材を配置し、サイクリストが「ウインドブレーカー」を利用し得るユースケースにおける効果を最大限に高める工夫をしているように思えます。
続きます。