レタッチ技術について説明してみた: ヴィネットによる視線誘導
今週からは不定期でレタッチのテクニックについて解説していきます。 基本的にAdobe Lightroom Classicを使っている方向けの内容になります。
主題を際立たせる
写真撮影において重要なのは、自分の伝えたいことがしっかりと伝わるように構図を考えること。
そしてそのためには、構図の主役であるところの主題を決め、いかに際立たせるを考えることが重要です。
ヴィネットという手法
今回はヴィネットという手法により、主題を際立たせる方法について説明します。
ヴィネット(vignetting)は元々光学上の概念であり、画像の中心と周辺の明るさに差が出ることを言います。
それが転じて、写真の任意の部分を中心としたその周りを暗くする手法という使われ方をするようになっています。
ヴィネットの効果
ヴィネットの効果はずばり、視線の誘導です。
額というものがなぜあるのか考えたことはありますでしょうか?
ただの装飾というわけではありません。
額は絵と外界を遮断する壁であり、それにより閲覧者の視線を絵に集める、つまり視線誘導の効果があるのです。
スポットライトも同様です。ステージなどにおいてある一点だけに光を当てることで、その部分を目立たせる。
これも視線誘導ですね。
特定の部分を中心とし、周囲を暗くするヴィネット。
それにもこれらと同じ効果があるということです。
周辺光量減光の効果の利用
では早速Lightroomによるヴィネットを実践していきましょう。
今回利用するのはこの写真です。
森の中を自転車が走る写真ですね。 ここでの主題は小さく写っているサイクリストですが、周りの風景も主張が激しいのであまり目立ちません。
これをヴィネットによるレタッチで改善していきたいと思います。
まず写真をLightroomで開きます。
今回利用するツールは効果: 周辺光量減光になります。 読んで字のごとく周辺の光の量を減らす効果を適用できるツールです。
このツールのスライダーをマイナス方向(左)に動かすと、画像の真ん中を中心としたときの周辺を暗くすることができます。
この効果によりサイクリストの周りが暗くなったため、視線誘導の効果(撮り手が見せたいものに目を誘導する)が出たのではないでしょうか。
円形フィルターの利用
この効果を更に強めたいと思って周辺光量減光のスライダーを左に動かすと、サイクリストまで暗くなってしまってしまいます。
それはサイクリストが画像の中央にいるわけではないため、減光効果の対象になってしまうからです。
そこで次に利用するのが円形フィルターです。
円形フィルターとは、任意の大きさの円の内側または外側にのみ効果を与えることができる(デフォルトは外側)フィルターです。
このフィルターのサイズをサイクリストと同程度の大きさに調整します。
そして「露光量」のスライダーをマイナス側(左)に動かすことでサイクリストの外側のみを減光することができます。
これにより、ヴィネットによる視線誘導の効果が更に高まったのではないかと思います。
完成形の写真はこちらです。
写真奥のサイクリストに視線が吸い寄せられるようになったと思います。
まとめ
- ヴィネット(周辺の明るさを下げる)により視線誘導の効果をもたらすことができる
- Lightroomでは周辺光量減光のツールにより写真の真ん中を中心とした周辺の明るさを落とすことができる
- 円形フィルターを使うと、主題が写真の中心にいない場合でもヴィネットの効果を実現できる
以上になります。
是非、ヴィネットを駆使して主題を際立たせるレタッチを実現してみてください。