InstagramのフィルターをLightroomで再現してみた Part6 Ginghamの分析
前回はRGBトーンカーブとその調整方法について説明しました。
今回はついに最終回、今まで得た知識を総動員してLightroomで再現したInstagramのGinghamフィルターを分析していきたいと思います。
InstagramのGinghamフィルターについては Part1を御覧ください。
Part2において、私はGinghamフィルターを再現するためにYoutubeの動画を参考にしたと言いましたね。
観ていただくとわかるように、この動画ではPhotoshopにてRGBのトーンカーブ3本をそれぞれ別々に編集しGinghamフィルターを再現しています。
Photoshopではコントロールポイントを座標指定で打つことでトーンカーブを曲げることができます。
トーンカーブパネルの横軸をx, 縦軸をyとすると、(x, y)となる位置にコントロールポイントを打つことができるということを意味します。
横軸-縦軸はそれぞれ255が最大であるため、Photoshopではこの機能を使って細かいトーンカーブの調整が可能です。
これを見て
「おっ!意外と簡単じゃん!やってみよ!」
と思ったのですが、実はLightroomにはこの機能が無いんですよね。。。
というわけで、動画を一時停止しながらコントロールポイントを(手動で)打って作ったGinghamフィルターのRGBトーンカーブがこちらになります。
(きっとPhotoshopからインポートする方法もあるんだろうけど、まぁいいや。。)
これだけ見てても仕方ないので、まずはGinghamの特徴を抑えるために補助線を引いてみましょう。小学生のときよくやりましたよね。角度求めるときのあれ(違うか)。
トーンカーブは左に行くほど暗く、右に行くほど明るいです。それを3つに分けます。具体的には以下。
- 暗部(暗い部分)
- 中間部(中くらいの明るさの部分)
- 明部(明るい部分)
そしてそれぞれ別々に見てみると、以下のような特徴がわかります。
RGBのトーンカーブ全てに共通しているのは以下になります。
- 暗部のカーブが基準線より上にある
- 中間部のカーブが基準線よりやや上にある
- 明部のカーブが基準線より下にある
RGBトーンカーブの原則として、基準線より上にある部分はより色が濃く、基準線より下にある部分はより色が薄くなるというものがありました。 その原則に則って考えると、Ginghamフィルターについては以下の大まかな特徴があることが言えます。
- 暗部の色が濃い
- 中間部の色がやや濃い
- 明部の色が薄い
続いてより細かい部分、RGBのトーンカーブの違いについて見ていきましょう。
動画内にも出てくるように、RGBトーンカーブのコントロールポイントの設定は以下のようになっています。
なんじゃこりゃという感じだと思います。
それぞれのスラッシュで区切られた数値の組み合わせ x/y は、x軸の値とy軸の値からなる、トーンカーブ上のコントロールポイントの座標に対応しています。
どこから見たらわからない数値の羅列ですが、ある部分に着目するとスッキリしてきます。
x軸の値に着目してみると、実は青と緑のコントロールポイントのx座標は全て同じであることがわかります。
というわけで、まずは青と緑の値に着目してみましょう。
青と緑のコントロールポイントのy軸の値のうち、青の値が大きい部分をマゼンタで、緑が大きい部分をイエローで囲んでいます。 こうしてみると、青の方がy軸の値が大きい数が圧倒的に多いですね。
コントロールポイントのy軸の値が大きいということは、カーブが基準線より大きく離れていることを意味します。 したがって、該当する色がより濃くなるということを意味しています。
つまりこの観察から、Ginghamは全体的に緑より青のほうが強いということが言えます。
では青と緑の関係がわかったところで、次は青と赤の関係についてみていきましょう。
今度は、青と赤のx軸の値が(だいたい)同じコントロールポイントのy軸の値を比較しています。
中間部は青の値が大きく、赤は暗部に1点と、あと明部は赤の値が大きいですね。
したがって、Ginghamは暗部と明部は赤が強く、中間部は青が強いということになります。
さて、これまでのことを合わせると以下のようなことが言えます。
Ginghamは
- 暗部の色が濃く、中間部の色がやや濃く、明部の色が薄い
- 全体的に青が強く、明部は赤が強く、2色に比べると緑が弱い
フィルターである。
では早速Lightroomで作ったGinghamフィルターを適用してみましょう。
この写真に対して
本家Instagramのフィルター適用後がこちらです。
そして、Youtubeに従って作成したGIngham風フィルターを適用すると以下のようになります。
あれ???なんか全体的に赤っぽくねぇか???
先程Youtubeで紹介されていたGInghamフィルターの特徴として、明部の赤が強いことを述べました。
確かに写真の明るい部分(主に空)が赤っぽくなってしまっていますよね。
Youtubeのパラメータを愚直にLightroomで再現すると、どうやらGinghamっぽくはなるけど完全ではない(赤くなる)という結果になりました。
さて、じゃあどうするか。
そう、RGBトーンカーブを調整することでGinghamの原典に近づけていきます。
ここまで読んできた方ならできるはずです。
ほんの少しだけ赤のトーンカーブの明部のコントロールポイントを下げます。
すると以下のようにバランスの取れた色味になりました。かなり本家に近づいたのではないでしょうか。
おわりに
さて、全6回を通してお送りしてきましたInstagramのフィルターをLightroomで再現する試み、いかがでしたでしょうか。
Instagramのフィルターを適用するといい感じになるのが悔しかったので始めた企画。
正直、フィルターを見ただけでは何がどうなってこの色になっているのかさっぱりわからず、動画からリバースエンジニアリングのようなことをしてやっとわかってきたのと、 その過程でヒストグラムやトーンカーブについて多くのことを学び自分の現像の表現の幅も僅かながら広がった気がします。
フィルターをゼロから作れと言われたら正直まだ難しいところではあるのですが、何をどうしたらどういう色が出るのかという積み重ねが、自分の意図通りの表現を作る力を作っていくのかなと実感しました。
センスは知識からという言葉が最近信条になってきています。むしろそれが自分を支えるものだと言っていい。
Ginghamに限らず、今後もトーンカーブ調整によって様々な写真表現を再現することを繰り返し、自由に色を扱えるようになっていけたらと思います。