自転車で残雪の白馬を走って絶景を撮ってきた vol.3
前回
宿に荷物を置いた我々は青鬼の棚田に向かうことにした。
青鬼(あおに)は、白馬村にある山村集落である。
ここに日本の棚田百選に選ばれた美しい棚田があるということで、風景好きとしては行かないわけにはいかない。
青鬼の集落まではホテルから8kmほど離れており、途中にも絶景スポットがあるということで寄り道しながら向かうことに。
白馬大橋からの眺め。
雄大だ。時期的に川の水は殆ど枯れてしまっており、橋の下に降りて写真を撮っている人もいた。
次は岩岳のスキー場前交差点へ。
岩岳スキー場の入り口前では素晴らしい白馬連峰の姿を拝むことができる。
気温が上がり雲が出てきたことも相まり、一層白さが際立つ白馬連峰。
村の背後に神々しい山々が立つなんとも言えないアンバランスな構図だ。日々この山を背後に暮らすというのはどのような感覚なのだろうか。
きっとこの村に暮らす人々は慣れてしまって何も感じないのかもしれない。
しかし少なくともコンクリートジャングルで暮らし続ける私にとって、その光景は壮大さや美しさを感じると同時にに畏怖の念を抱かざるを得ないものである。
青鬼の集落の前には超のつく激坂が待っていた。ふとサイクルコンピュータを見ると斜度17%の表示が。キツすぎる。
ここまでの走行距離は70km程度と少ないが、坂ばかりのコースということもあり脚には疲労が溜まっていた。 残った力を絞り出すようにペダルを踏み回していく。
くねくねと蛇行する山道を1kmほど登ると、急に視界が開け集落の入り口が現れた。
集落には金属製の覆いが被せられた茅葺屋根の家屋が立ち並んでいるものの、人の気配はあまり感じられなかった。 家屋には人は住んでいないということだろうか?
入り口の地図を見ると棚田は集落の頂上付近(集落は山肌に形成されているため、道には傾斜がある)にあるということなので、更に登っていく。
何かの目印だろうか?
300mほど登り、ついに棚田を一望できる場所に到達。
ここでも奥に遠く霞んだ白馬連峰が見える。本当にどこに行っても見張られているかのようだ。 それにしても雄大な白馬連峰をバックに広がる田んぼと集落という組み合わせは実に美しい。
田にはまだ水が張られていない。
本来田植えは気温14℃程度、最高気温が20℃程度の時期に実施されるそうだ。
先週まで雪が降っていたということを考えると、水張りにはまだ早いということだろう。
このままでも十分に美しい青鬼の棚田だが、やがて水が張られると、空が田んぼの水面に移りこむことでより一層素晴らしい風景を見せてくれるに違いない。
我々は少し休憩してから宿へと走り出した。
前景に田んぼ、背景に白馬連峰というある意味完成された構図とも言える。
白馬の風景は本当に美しい。 特に山に自転車が向かっていくという写真には自然と人という強弱の対比を感じる。何枚撮っても飽きない。
宿に戻ってきてからやることは決まっていた。飯だ。
長野というのはとにかく平坦路がない県である。 関東平野に住んでいると平坦が当たり前ということもあり、尚の事違和感があるのだがその違和感は身体にも現れる。
早い話がそれなりに消耗しており、とにかく腹が減っていた。 風呂に入ってから飯を食うとなると臭いがついてしまうということもあり、先に飯を食う運びになっていた。
そしてサイクリング後に食べたいものと言えば…
肉だ
そう、肉
なによりも運動によって損傷したタンパク質を補給できる。
そして美味い。これ重要。
ホテルマンにおすすめの肉料理の店がないか聞いてみると、近くに鉄板焼きの店があるとのこと。 二つ返事でそこに行くことに決め、予約を取ってもらった。
そしてなんとホテル側で送迎のシャトルを出してくれるとのこと。
しかも我々専用。
これも時期的に観光客が少ないせいだろう。
シャトルを待つ間、1日の疲労のためソファで意識を失いかけているSKを横目に館内を撮影する。
空いたグラスを観ていると発行した赤色の液体が飲みたくなってくる。あとはチーズとハムがあれば最高。
そうこうしているうちにシャトル準備が完了し、乗って10分もしないうちに店に到着した。 www.google.com
店に入るとカウンターに通された。
鉄板の目の前で”この世で一番美味いもの”が生成されていく過程を眺める。それが鉄板焼きの醍醐味と言えよう。
マスターがとても気さくな人だったので、「この時期って観光客少ないですよねぇ…どうしてなんでしょう?」と聞いてみる。
やはりスキーするには雪が少ないし水分が多すぎるし、登山やハイキングには雪が多くいまいち。 桜も咲いてないし、他のアクティビティもまだオープンしていないし。。ということで、来る人が少ないらしい。 もっと来て白馬を盛り上げてくれればいいのにー。と仰っていた。
自転車は路面が乾いていれば乗ることができるし、これまで挙げてきた絶景を観ればこの時期でも十二分に楽しめるということがおわかりいただけたと思う。
ホテル代もクオリティの割に安いし人が少ないおかげで至れり尽くせり、もはや皆来るしか無いのでは。。(いや来すぎると逆に楽しめないのか?)などと考えている間に料理が上がってきた。
まずはコースとは別に追加注文した焼き魚。レモンのソースが実に爽やか、魚も肉厚で大変美味しかった。
美味くないわけがない。 空腹と疲労は最高のスパイス、言うなればなんでも美味いがそれを超えて尚美味い。
最高のひと時を味わい、余韻に浸っていると予め連絡していたシャトルが到着。 乗り込むとあっという間に宿についた。
ちなみにホテルの前は激坂になっており、かつてヒィヒィ言いながら登っていたことを思い出した私達は文明の利器の素晴らしさを実感し、人力で坂を登ることの重要さ(世の中の便利さを知ることができるということ)を噛みしめるといういつものお約束をこなしたのだった。
ホテルについてからはこれまた山岳地帯にはお約束の温泉だ。これ以上ある?ないよね?という感じ。
その日はあっという間に眠りにつき、気付くと朝になっていた。 朝食はホテルらしくビュッフェ形式。美味い多い最高。
ビジホも含め、ホテルの楽しみと言えば自分は朝食を挙げる。 とにかく大食らいということもあり、腹いっぱい好きなものを食べれるビュッフェスタイルは大好きだし、特に旅行先はその地その地の食材を使った食事が出るので楽しみが増す。 特にクロワッサンにバターと蜂蜜を塗りたくって食べるのが最高(名物ちゃうやんけ)。
ちなみにここまで至れり尽くせりなのに宿泊料金は朝食付きでビジホに毛が生えたレベルのお値段。本当に大丈夫か?という印象。
故にこの時期(4月中旬)の白馬サイクリングはかなりおすすめできるアクティビティの一つと言える。
尚帰りは来た道を通って帰った。ほとんど下りなので楽なものである。
旅を終えてみて
今回の旅を終えてみてとても良かったことがある。
それは満足のいく自転車旅の写真が撮れたということ。
無論、一眼を持参したこと、運良く天気が最高に良かったこと(これは仕事を頑張っていたご褒美と思いたい)がとても大きい。
しかし一番大きかったのは自転車仲間SKの存在であろう。
これまでの自転車旅は一人で行くことが多かった。故に、主題のないただの風景写真になってしまっていた。
そこにSK、サイクリストという被写体が主題として加わることにより「ただの風景写真」から「自転車旅写真」としての写真としての物語性が強くなり、より自分の撮りたい写真に近づいたように思える。
これまでも何度か述べてきたが、サイクリストと自然というのは強弱の対比であり、敢えて文明の利器が闊歩するこの時代に自分の力で自然に挑んでいこうとする力の現れでもあると感じる。
SKが主題となることで、そういった人間の強さ、自然の雄大さ、またそれらを合わせたものを表現できたと強く感じている。
また、SKには写真を良くするために様々な注文をつけたがそれに快く答えてくれたのが大変有り難かった。 おかげで良い写真が撮れたと感じている。
3回に渡って書きなぐってきた白馬自転車旅の記事の最後は、彼への礼で締めくくることにする。