工場夜景の撮り方について語ってみた その③
前回は工場夜景撮影に必要な機材について説明しました。 weekendcycler.hateblo.jp
今回はいよいよ撮影テクニックに入っていきます。
レリーズもしくはセルフタイマーを使う
レリーズとは、カメラ本体(ボディ+レンズ)に触れずにシャッターを切ることができるリモコンのこと。
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セルフタイマーとは、シャッターボタンを押してから決まった秒数(2-10秒)が経過した後に自動でシャッターを切る機能のこと。 よく集合写真を撮影するときに、撮影者自身も写真に入りたい!なんてケースに使われるイメージが強いと思います。
レリーズもしくはセルフタイマーの何れかは三脚を使った撮影には必須となってきます。 (レリーズの機能によってはセルフタイマーを組み合わせることも可能)
なぜなら、シャッターボタンを押したときの力でカメラが揺れることで、撮影された写真がブレてしまうため。
え?そんなに?と思うかもしれませんが、写真でいうとこれぐらいの差が出ます。
セルフタイマー利用(2秒)
セルフタイマー利用(10秒)
シャッターボタン押下
せっかく三脚でカメラがブレないように固定しているのに、シャッターボタンを押す時にブレてしまっては意味がないですよね?
なので、工場夜景撮影では必ずレリーズ利用もしくはセルフタイマーをセットするようにしましょう。
なおセルフタイマーの場合、カメラボディによってセットできる時間が異なると思います。
私の持っているsony a7iiだと2秒または10秒のタイマーをセットできます。 このセルフタイマーにセットする時間には注意が必要です。
というのも、望遠レンズのような長いレンズを使う場合、必然的にシャッターボタンを押した場合のモーメントが大きくなるため揺れの時間も大きく・長くなります。 したがって2秒のタイマーをセットしたからといって、シャッターボタンを押して2秒後に静止する保証はないわけです。
したがって、レンズによっては撮影しつつセルフタイマーの時間を調節するなどの操作が必要になってきます。 無論、レリーズを利用する場合はこの手の心配はなくなります。
思うような写真が撮れず出直すくらいなら、英世を2枚出してレリーズを買ってしまいましょう。
F値の設定
いよいよパラメータの話に入っていきます。 最初はF値の説明から。
前回の記事でF値については大きめに設定する必要があると述べました。
シャープさと奥行きを演出
その理由は2つあり、そのうちの1つは前回述べたように 人工物たる工場の複雑な形状をボケさせることなくシャープに写すため。
500万回くらい言ってますが、F値が小さくなるとピントが合う範囲が狭くなります。 weekendcycler.hateblo.jp したがって、F値を小さくして奥行きのある構造物の先端にピントを合わせた場合、自然と奥側の輪郭はおぼろげになってしまうということになります。
F値が写真にどのような変化をもたらすのか、早速見てみましょう。
以下に挙げる4枚はF値を変更しながら同じ構図で撮影した写真になります。 明るさを少し調整しただけの、ほぼほぼJPEG撮って出しです。
は???全然変わらないやんけ???Weekendcycler何言ってんのお前???
てなった人。私もです()
正直言って意外と変わらなくて焦った。強風の中自転車倒してまで撮りに行く価値あったの?ねぇ?
でも、パッと見ではわからない部分をこだわっていくことにより全体のレベルを少しずつ上げ、チリツモ効果で素晴らしい作品にしていく。
それが写真というもの。。というわけで、しっかりと細かい部分を解説していきますよ!!
(一応違いはあるので、分かりづらい方はPCでリンク先を開いて拡大などしてみてください)
以下が写真の右上あたりにある煙突の部分をトリミングしたものになります。
これまたわかりにくいですが、F2.8とF11を比較するとF2.8の方が全体の輪郭がややぼやけているのがわかりますでしょうか。
今回の被写体はそこまで奥行きがないプラントなので分かりづらいですが、より広範囲のプラントを斜め上から俯瞰で写す時などは顕著になってきます。 (本当はそういう例を載せたかったが。。)
ちなみに、前ボケより後ろボケの方が広範囲に及ぶため、ピント面は最も後ろの被写体に合わせるのがベストです。 (前ボケはピント面より前側、つまり撮影者に近い方にできるボケ、後ろボケはその逆でピント面より後側にできるボケ)
したがってマニュアルフォーカスでの撮影が大前提となります。
工場夜景だと、パイプが密集している奥まった部分などにピントを合わせるとよいと思います。
光条を出す
工場夜景でF値を大きく大きめに設定する理由にはもう一つあります。
それは光条を出すため。
え、工場じゃなくて光条?そう、光条です。
光条とは放射状に伸びた光のことを言います。
前回、点光源がクロス状の光になるクロスフィルターについて説明しました。程度が凄まじいですが、このクロス状の光も光条の一つ。 フィルター無しでここまで凄まじい光条を出すことは不可能に近いですが、 F値をコントロールすることで構図内に存在する点光源の光条の強さをある程度コントロールできます。 (むしろこちらの光条の方が自然)
先程と同じく、F値別の拡大写真を並べてみました。
F2.8ではおぼろげだった点光源(工場の灯り)が、F値が大きくなるにつれ光条がより顕著に出るようになっているのがわかると思います。 F9あたりから顕著になってきて、F11までいくとかなり鋭利な光条になっていますね。
F2.8のようなぼんやりとした点光源よりも、光条がしっかり出ているF11の写真の方がより工場という被写体にマッチしていると私は思います。いかがでしょうか? 工場自体が鋭角な構造物であるため、鋭利な光を持つ光条がよりマッチしているというか。
逆にオレンジ色の灯りが灯る温かみのあるヨーロッパの夜の町並みなんかは、敢えて光条を出さない淡い朧げな光が合っている気がしますね。
まとめ
さて、F値を大きくしたときの工場夜景への変化は以下であるということがわかりました。
- シャープが増し、奥行きが出る
- 光条が顕著になる
これを知った上で改めて4つの写真(トリミングしていないもの)を見ると、なんとなく違いがわかるのではないでしょうか?
結論から言えるのは、光条が目立ち始めるのはF9あたりであるため、
工場夜景を撮影する際は少なくともF9までは絞り、
工場の最奥にマニュアルフォーカスでピントを合わせ、
レリーズ(もしくはタイマー)でシャッターを切る。
というのが私がおすすめする撮影方法です。
今日はこれまで。実は工場夜景の撮影テクニックはこれで終わりではありません。
次回に続きます。