Weekendcycler

Cycling, taking photographs, and drinking a cup of tea on the weekend

京都に写真を撮りにった part4 (3日目)

3日目の朝食はキャンセルした。
朝食をゆっくり食べてから出たのでは、ブルーアワーに間に合わないだろうと思ったからだ。

ブルーアワーとは、日の出前に空が濃い青に染まる時間帯のこと。
光の減衰により、幻想的な風景を撮影することができることで知られている。

早く宿を出る理由はもう一つ、観光客を避けたいという思いもあった。
これについては説明は要らないだろう。

朝起きてから急いで準備し、京都駅へ向かう。
年末の朝5時台ということもありさすがに電車に乗る人は少ない
まずは烏丸線に乗り、四条駅で下車。
次いで四条烏丸駅から阪急に乗り換え、桂駅を経由して嵐山駅に向かう。


まさに今から向かおうとしている嵐山が、自分が京都で一番訪れたかった場所だった。
果たして満足のいく写真は撮れるのか?そんなことを阪急に揺られている間ずっと考えていた。


しかしそんな心配は嵐山駅に到着し、
電車を降りてふと後ろを振り返った瞬間、どこかに消えてしまった。

心が震える情景がそこにあった。

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街灯が発するオレンジ色の光と、まだ完全に夜が明ける前の薄青い空。
そのコントラストがとても美しかった。


こんな光景を以前にもどこかで観たことがあると感じていた。
そうだ、かつて大学の卒業旅行で訪れたイタリアの夜だ。


日が暮れると共に、一つ、また一つと灯り始めるオレンジ色の街灯。
完全に日が暮れる前の深い青みがかった空。
だんだんと少なくなる人々の往来。
優しい光の溢れる広場とは逆に、暗く影を落とす路地。


旅行から帰ってきてからもずっと焦がれ続けていた非日常をまさか日本で味わうことになるとは思わなかった。
…いや、ちょっと違う。
きっと、行ったことの無い場所は全て外国なのだ。


そこには非日常が、きっと素晴らしい出会いが待っている。
そしてそれこそが旅の魅力だと。


そして、きっと今日は良い一日が始まる、そんな気がしていた。


はやる気持ちを抑えられなかったのか、嵐山駅を出たときは自然と早足になっていた。
向かう先は竹林の小径だ。
ずっと撮りたかったものがそこにある。


竹林に到着して撮影の準備を始める。
幸い、まだ誰も来ていないようだ。
心のなかで小さくガッツポーズをする。


完全に日が出ておらず、まだ竹林は薄暗い。
何枚かシャッターを切るも、どうもパッとしない。
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時間帯を間違えてしまったか…


そう思ってしばらくぼーっとしていると、視界の隅に光がちらつき始めた。
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真横から射す朝日に、ちょうど竹林の柵の先端だけが黄金に染まっていたのだ。
ただ薄暗い世界の中で、そこだけが黄金に染まっていた
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その光景はとても美しかった。


そしてこれは良い写真が撮れたな、と思った。


ときに、良い写真とは何だろう?
自分が良いと思った写真?それとも他人が良いと思った写真?もしくはプロが撮る写真は良い写真?
色々な考えがあると思う。
確かにプロが撮った写真には惹きつけられるものがある。


じゃあ、そもそもプロとアマの違いとはなんだろう?
僕はそれを、偶然を引き寄せる技術、そして必然を限りなく偶然に近い必然に近づける技術と考えている。


プロの鉄道写真家である中井精也氏がポルトガルリスボンで撮影した写真に、
朝の通勤時間に道路を走る赤色の路面電車と、その手前を横切る赤色のコートを着た女性を捉えた写真があった。
路面電車の赤と女性の赤、2つの赤が際立ち、とても良い写真だと思った。


中井精也氏はこの写真を撮る上で、
路面電車が通る道であり、かつ大学前という人通りが多い場所を選び、
かつ通勤や通学で人通りがよりいっそう多くなる時間帯である朝を選んだ。
そうしてたまたま電車が通った時にちょうど赤色のコートを着た女性が目の前を通り、すかさずシャッターを切ったとおうわけだ。

この例で言うと、「面白いことが起こりそう、良い写真が撮れそう」という考えで様々な要素を詰めていくと、
実際に良い写真を撮影できる確率が高くなるということになる。


それはまさに偶然を引き寄せる技術と言えるのではないだろうか。


この技術を身に付けるには、ファインダーを通して見ていただけではダメだろう。
普段から自分の五感を駆使して色々なものと出会う、そしてその経験を積み上げていくことによって初めてそういった瞬間に出会えるようになるのではないだろうか。


自分はまだその域には到底たどり着けそうにない。
しかしそんな自分にも、この京都の嵐山で見たいくつかの情景のように心が震える瞬間というのはあるものだ。
それは経験を重ねたプロにとっても同じで、思いがけない瞬間というのはきっとあるのだと思う。
そしてそういう瞬間に味わう得体の知れない感動をもう一度味わいたくて、引き寄せたくて、写真を撮り続けるのではないだろうか。


だから今日もカメラを持って外に出ようと思う。
そしてまだ旅に出ようと思う。
ただただその瞬間に出会うためだけに。