Weekendcycler

Cycling, taking photographs, and drinking a cup of tea on the weekend

InstagramのフィルターをLightroomで再現してみた Part2 ヒストグラム

前回はinstagramのフィルターはLIghtroomで再現できること、そして実際に再現できたことを報告しました。

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今回からはどうやって再現したか、また何故再現できるかについて順を追って解説していきたいと思います。

どうやって再現したのか?

結論から言います。

Youtube観ながらやりました()

お前、前回あんなにドヤっておきながら動画の力借りたんかい!っていうね。

でもね、正直言ってどうやって実現したらいいかさっぱりわからなかった。 それくらい僕は色彩と光という分野について疎かったということです。

であれば。

最初からプロのお手本を見てしまう。 そしてそのプロセスを順を追ってしっかりと理解することによって色彩と光に対する知識を深め、応用が効くようになれればいいのではと。

僕のやりたいことの本質は単にginghamのフィルターを作りたいだけではありません

ここでいう「応用が効く」とは、どんな状況でも自分の撮りたい写真が撮れる、自分に描きたい絵に出来るということ。

まさにそれをやりたいのです。

トーンカーブヒストグラム

上に挙げたお手本動画ではLightroom上で曲線を変化させることによってginghamのフィルターと似たような効果を写真に与えています。 この曲線のことをトーンカーブと言います。

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Lightroomトーンカーブヒストグラム

図を見ると"カーブ"と言いながら直線になっていますが、これは変化させる前のデフォルトの状態のため。 ここから好きな部分をぐにゃぐにゃと曲げることができます。

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曲げたトーンカーブ

また、後ろに山のような起伏が見えると思います。これがヒストグラムです。

このヒストグラムトーンカーブについて理解することで、写真の雰囲気をある程度自由に操れるようになるため、まずはそれぞれについて解説していきます。

ヒストグラムとは

ヒストグラムとは、輝度値、つまり明るさ毎に写真データ上のピクセル数の分布を表したものです。

写真データは以下のように、小さな正方形がたくさん集まったような形式になっています(簡単のために4*4=16で表現、実際は2430万など)。

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写真はピクセルの集合体

この正方形一つ一つをピクセルまたは画素といい、それぞれが色情報 (色調や階調) を持つ最小要素になります。

それぞれのピクセルは輝度情報(明るさ)を持ちます。例えば、4*4=16ピクセルの写真が以下のような輝度情報を持つときを考えてみましょう。

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輝度は1-5段階で表現、数値が小さくなるほど暗い

明るさを1-5段階で表現し、数値が小さくなるほど暗く、大きくなるほど明るくなるとします。

これをヒストグラムで表すと以下のようになります。単に輝度毎のピクセル数を並べたものになりますね。

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輝度分布を表すヒストグラム

縦軸がピクセル数、横軸が明るさになります。

このヒストグラムを見ると、全ての輝度のピクセル数が概ね3個ぐらいにまとまっており、形状も特に大きな勾配がない平坦になっていますよね?

これが何を意味しているかというと、全て輝度の分布が同じくらい(分散が小さい)=明暗差が少ない写真ということになります。

つまりヒストグラムから写真が持つ明るさ全体像が見えてくるということになります。

例えば4*4=16のピクセルのうち輝度1が8個、輝度5が8個、つまりヒストグラムの分布が明るい部分と暗い部分に偏るなら、この写真は明暗差がはっきりしている(コントラストが強い)写真ということになります。

写真だとこのようになります(実際はピクセル数が2430万個ぐらいあるので、ヒストグラムにすると輝度分布が波を描きます。)。 ヒストグラムの分布が右と左、つまり明るい部分と暗い部分に偏っていますよね。

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コントラストが強い場合のヒストグラム

一方で輝度1が16個のように、ヒストグラムの分布が左(暗い部分)に偏っているなら真っ暗に見えます。 実際の写真だと以下のようになります。

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全体的に暗い写真のヒストグラム

輝度5が16個のように、ヒストグラムの分布が右(明るい部分)に偏っているなら真っ白に見えます。 実際の写真だと以下のようになります。

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全体的に明るい写真のヒストグラム

このように、ヒストグラムを見ると写真全体の明るさの雰囲気を(大体だけど)掴むことができます。

今回はここまで。 次回はトーンカーブについて解説します。

InstagramのフィルターをLightroomで再現してみた Part1

みなさん、写真編集してますか?

レタッチ

私はInstagramTwitterなどSNSに写真を投稿するときは、その前に必ずレタッチ(画像の修正や加工作業)をします。

  • before

    DSC07058

  • after

    20190711-DSC07058

目的は

  • 素材としての写真に自分なりの表現を加えて作品として仕上げるため

  • 失敗してしまった部分をよく見せるため

など。

これが良いかどうかは論争になるため一旦置いておくとして。

レタッチってみなさん結構やられてるんじゃないかと思います。

Instagramのフィルター機能

みんな大好きinstagram、僕も大好き。

自分の写真を誰かに見てもらうのにこれほど良いツールもないのではないでしょうか。

見たい見たくないにかかわらず、自分がよく見る写真のタグの投稿を自動で表示してくれるので、自分がフォローされてるかどうかに関わらず自分の写真が色々な人に見てもらえるというシステム。

このinstagramに限った話ではないですが、写真系のアプリには須らく「フィルター」というレタッチ機能が搭載されています。

このように、アップする写真に対して適用することで良さげな雰囲気を手軽に付加できるという便利機能(Normalは無加工、そのままの状態)

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instagramのフィルター機能

"Gingham"は一昔前のフィルムカメラのような、彩度抑えめかつ柔らかい雰囲気を演出してくれます。

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フィルター "Gingham"

淡いモノクロのような表現になる"Moon"。

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フィルター "Moon"

このように、指先一つでガラッと写真の雰囲気を変えることができるというわけです。

悔しくて使いたくない

フィルターは超便利。

でもこういう得体の知れない「なんだかよくわからないもの」ってなんだか気持ち悪くないですか?

なんかうまく乗せられてる気がしませんか?

いやちょっと違うな。

なんか悔しくないですか?

"理解せず"に、もしくは"納得せず"に使うって、なんだか負けた気になりませんか?

僕はなります。負けず嫌いなので。

なので、これまではフィルターを一切使わず、LightroomやLuminarの機能を駆使してなんとか自前で写真をレタッチしてきました(これも自前と言ってしまうと賛否両論だけど)。

ゆえに僕のinstagramにアップされている写真は全てNormal, つまりinstagramのフィルターを適用しているものは1枚もありません。

心の底では気づいていたフィルターの便利さ

とはいえ、前述したようにフィルターは便利です。心の底では僕も気づいていたんです。

自分でレタッチした写真をinstagramにアップしようとしてフィルター編集画面に遷移したとき、明らかにフィルターを適用したほうがいい絵になるという事象に何度も見て見ぬふりをしてきました

しかし自分のためでなく誰かのために撮る写真でその事象が発生したとき、このままではアカンと思ったわけです。

これは自分のためだけの写真ではないから、より良くなる可能性に目を瞑ってはならないと。

ちなみにこの写真をinstagramにアップしようとして、

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あれ、Ginghamめっちゃよくね。。?となった次第。

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フィルター適用前

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フィルター "Gingham" 適用プレビュー

instagramのフィルターはレタッチソフトで再現できるはず

instagramのフィルター機能も基本的には画像加工のはずなので、写真の色の彩度や輝度、色相などをある一定の法則で変更することにより作っているはず。

ということは、Lightroomなどのレタッチソフトで絶対に表現できる、いやできないわけがない(反語)ということでもあるわけです。

そしてそれが出来るということは、写真、もとい色彩表現への理解を深めることにもなるということ。

そうすればもっといい作品作れるよね。

だってセンスは知識だもの。

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結果

結果から言うと、色々といじってGinghamっぽいフィルターをLightroomで再現することができました。

  • before

    20190711-DSC06654

  • after

    20190711-DSC06654-3

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Lightroomでの再現

ま、若干マゼンタかぶりしているわけですが。。

次回からはこれをどうやって再現したのか、そしてなぜこのメカニズムについて説明していきたいと思います。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part6「鏡面磨き」

前回は革靴の手入れの第二段階である「保湿・補色」について説明しました。

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今回は、その後の工程である「保湿・補色」について説明していきます。

  1. クリーニング ← 前々回はコレ
  2. 保湿・補色(乳化性クリームの塗り込み) ← 前回はコレ
  3. 鏡面磨き(蝋製ワックスによる磨き) ← 今回はコレ

鏡面磨き

クリーニングが完了すると、皮革の表面のゴミや塵、こびり付いた汚れだけでなく乳化性クリームの層と蝋製ワックスの層が全て除去されるため、皮革が露出されます

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クリーニングすると皮革より上の層全てが除去される

非常にクリーンな状態ですが、表面の油分・水分が枯れた状態であるため、このままではすぐに乾燥して革靴の寿命を縮めてしまいます

前回説明した「保湿・補色」では、この状態から乳化製クリームを塗り込み、上から二層目の乳化性クリームの層を作りました。

今回の鏡面磨きでは、ここから更に蝋製のワックスを塗って磨き込むことで、靴の表面を保護する最上層を作っていくと共に、表面に綺羅びやかな光沢を与えていきます

1. ワックスの塗布

まずは革靴にワックスを塗布していきます。今回は革靴の色と同様のブラックを利用します。

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少量を指に取ります。

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シワの出にくい部分に塗っていきます。ワックスによるコーティングはシワができるとヒビ割れてしまうため、シワができない部分にだけ塗り込みます。

爪先は弧を描くように塗ります。

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側面は指をスライドさせるように塗ります。

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踵も爪先同様、弧を描くように塗っていきます。

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一度塗り終わったら、4−5分置きます。こうすることで後工程で磨いた時に光沢が出やすくなります。

2. 磨き

続いて、ワックスを塗布した部分を磨いていきます。

まず、少量の水を用意します(私は受け皿としてワックスの蓋を利用することが多いです。)。

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次に水を数滴、ワックスを塗布した箇所に落とします。ほんの1,2滴でOKです(多すぎないのがコツ)。

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そして、フランネル布を指にキツく巻き付け、

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極少量のワックスを指先に取ります。

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この状態で、水滴を落とした部分を優しく磨いていきます。水が切れてきたなと思ったら水滴を更に落として続けます。

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ワックスの塗布部分を一通り磨き終わったら、もう一度「1. ワックス塗布」 -> 「2. 磨き」の工程を繰り返します。

そうすることで靴の表面が光沢を帯びてきます。

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複数回繰り返す理由は、蝋でできた膜を何層も重ねることで保護力を長持ちさせるため。また層を重ねた方が光沢も強くなり非常に綺麗に仕上がります。

シワはどうしても消せないので残っていますが、かなり綺麗になりましたね。

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3. 紐を通す

最後に靴紐を通して、完成です。

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メンテナンス前後の比較

メンテナンスの全ての工程が完了したので、お待ちかねのビフォー・アフターです。

爪先・全体俯瞰

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横①

  • Before

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  • After

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横②

  • Before

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  • After

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  • Before

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  • After

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Beforeは色が若干霞んだ黒であるのに対し、Afterは全体的に黒みが増していますよね。 また表面の砂埃や水汚れなどもなくなり、光沢が強くなっていることがわかると思います。

特に踵はかなり綺麗に仕上がったのではないでしょうか。

おわりに

きっかけはキングスマン、革靴とはなんぞやから全6回に渡って書き連ねてきた革靴メンテナンスの記事でしたが、いかがでしょうか?

工程や使用する道具が多く、手間がかかる作業ではありますが磨き終わって光る革靴を見たときの達成感はひとしおです。

是非ご自分でメンテナンスされた靴でパーティーや結婚式、大事な打ち合わせなどに参加してみてはどうでしょうか。

きっとその場で一番輝いているのは貴方の靴です。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part5「保湿・補色」

前回は革靴の手入れの第一段階であるクリーニングについて説明しました。

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今回は、その後の工程である「保湿・補色」について説明していきます。

  1. クリーニング ← 前回はコレ
  2. 保湿・補色(乳化性クリームの塗り込み) ← 今回はコレ
  3. 鏡面磨き(蝋製ワックスによる磨き) ← 次回はコレ

保湿・補色

クリーニングが完了すると、皮革の表面のゴミや塵、こびり付いた汚れだけでなく乳化性クリームの層と蝋製ワックスの層が全て除去されるため、皮革が露出されます

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クリーニングすると皮革より上の層全てが除去される

非常にクリーンな状態ですが、表面の油分・水分が枯れた状態であるため、このままではすぐに乾燥して革靴の寿命を縮めてしまいます

そのため、乳化性クリームを塗り込んで保湿していく必要があります。

表面の状況によって異なる乳化製クリームを利用します。

乳化製クリームには主に色付きと色なし(ニュートラル)の2種類があり、表面の色が薄くなったり剥げている場合は前者を利用し補色を、それ以外や色を変えたくない場合はニュートラルを使います。

また、敢えて表面の色とは少し異なる色のクリームを部分的に使うことでグラデーションを作るといったオリジナリティを出していくことも可能です。

以下の革靴は本来茶色一色のものですが、メンテナンス時に爪先部分だけ焦げ茶のクリームを塗ることで重厚感を演出しています。

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1. 乳化性クリームの塗り込み

今回は若干のスレや色あせがあるので、表面の色と同じブラックのクリームを塗り込んでいきます。

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少量を直接手に取り、

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革靴の表面全体に塗り込んでいきます。アッパーとコバの接続部分にもしっかりと塗り込むようにしてください。

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で直接塗る理由は、体温によってクリームが溶けて馴染みやすくなるためと、塗り過ぎ防止のため

どうしても指を汚したくない場合は塗布用のペネトレイトブラシを使って塗る手もあります。

コバ部分に塗布しやすい一方で、ブラシ自体のメンテナンスが面倒なのがデメリットでしょうか。

[エム・モゥブレィ]クリーム塗布用ブラシ ペネトレィトブラシ 7012

[エム・モゥブレィ]クリーム塗布用ブラシ ペネトレィトブラシ 7012

塗り終わるとこのように塗りムラが出た状態になります。

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2. ブラッシング

今度はこれをブラシを使って均していきます。目的は塗りムラをなくすこと、クリームを皮に染み込ませること、そして余分なクリームを取り除くこと。

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ここで利用しているのは豚毛ブラシです。

[コロンブス] ブラシ 豚毛<ツヤ出し> 7091 シロ 約17?

[コロンブス] ブラシ 豚毛<ツヤ出し> 7091 シロ 約17?

見てわかるように真っ白で綺麗ですが、これは購入したばかりであるため。

いつもは馬毛ブラシを使っていたのですが、クリームを皮に塗り込むにはコシの強い豚毛ブラシが良い、ということで今回新しく購入して使ってみました。

革にクリームを押し込むイメージで、少し強めにグイグイとブラッシングしていきます。

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塗りムラがなくなりましたね。

3. 磨き

最後にフランネル布をきつく指に巻きつけ、乾いた部分で全体を磨いて「保湿・補色」の工程は完了です。

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次回は最後の工程である「鏡面磨き」について説明します。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part4「クリーニング」

前回は天然皮革の靴を選ぶ意味とメンテナンスの重要性、そして革靴のメンテナンスの工程について説明しました。

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メンテナンスの工程は以下の3つからなります。

  1. クリーニング
  2. 保湿・補色(乳化性クリームの塗り込み)
  3. 鏡面磨き(蝋製ワックスによる磨き)

今回は、最初の工程であるクリーニングについて詳しく説明します。

0. 今回モデルに使う革靴について

自分の持っている革靴は比較的綺麗なものが多い(割と新しいかつメンテナンスしている)ので、ビフォー・アフターが分かりづらいと思いました。

そこで、今回はモデルとなる革靴を別途、高円寺にある古着屋のWhistler様で購入しました。

ライブの合間に買い物に付き合ってくださったFor Tracy HydeのU-1さん(Gt.)、Sokoさん(Dr.)ありがとうございました!

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幅広かつ甲が低いという私の足に合うものを店員さんに探してもらったところ、いい感じの黒のウイングチップがHITしました。ちなみにアメリカ製。

状態は非常によく、若干色がくすんでいる程度で革底の減りもほぼなし。クリーニングだけでかなり綺麗になりそうということで、U-1さんとSokoさんの後押しもあり購入しました。

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黒のウイングチップ

Whistler様では購入時にクリーニングのサービスがあるそうですが、今回はメンテナンスの記事を書くために購入したので敢えてそのまま持ち帰らせていただくことに。

黒のウイングチップ持っていなかったのでちょうどよかったです。

1. 紐を抜く

ローファーなどの紐のない靴を除き、殆どの革靴には紐がついています。

紐が付いたままだとメンテナンス時にその部分が引っかかってしまって、均一に乳化性クリームを塗ったり汚れを取ることができません。

まずは紐を抜きましょう。

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2. シューキーパー(シュートゥリー)を入れる

シューキーパーとは、靴を適切な形に保つための道具です。

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シューキーパーを入れることで靴についたシワをしっかりと伸ばすことができます。

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これによって、後工程のブラッシングでシワの隅々のゴミを掻き出したり、乳化性クリームを奥まで浸透させることができるようになります。

シューキーパーはメンテナンス時だけでなく、履いていないときは常に入れておくことをおすすめします。

型崩れを防ぐことができるだけなく、木製であれば湿気を吸ってくれるためカビや臭いの発生を防ぐことができ、結果として革靴の寿命を大きく伸ばすことができます。

出張先に革靴を持っていく場合などは軽量なプラスチックのものを使うのもアリです(吸湿はできないので注意)。

3. ブラッシング

いよいよ本格的なクリーニングに入っていきます。まずはブラッシングです。

ブラッシングの目的は、靴の表面についたゴミや塵を掻き出すこと

ゴミが塵が靴の表面に付いたままだと、表面の水分・油分を吸うため乾燥しやすくなってしまいます。

また、後工程で乳化性クリームを塗り込んでいく際に、表面にゴミが残った状態だと革靴を傷つけてしまうと共に、表面にゴミを閉じ込めてしまうことにもなります。

ブラッシングには馬毛のブラシを使っていきます。

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[コロニル] 馬毛ブラシ 17cmx5.4cmx4.5cm CN044042 Brown F

[コロニル] 馬毛ブラシ 17cmx5.4cmx4.5cm CN044042 Brown F

馬毛ブラシは毛1本1本が細くてしなやかであるため、シワやコバ部分(アッパーから外にはみ出た部分)の汚れを掻き出すのに非常に適しています。

1cmくらい曲がるような強さで毛を表面に当て、箒で地面をはらうようなタッチで全体を磨いていきます。

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コバの部分は毛が隙間に入るように当てて、スナップを効かせて掻き出していきます。

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4. ワックス落とし

革靴のメンテナンスでは、乳化性クリームによる栄養補給と、蝋製のワックスによる鏡面磨き(光沢と表面の保護が目的)を実施します。

したがって、メンテナンス後の革靴の表面には乳化性クリームと蝋製ワックスによる層ができていることになります。図にすると以下のようになります。

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メンテナンス後の革靴の表面に形成される階層構造

古いワックスやクリームが残っていると保湿・補色ができないため、まずはクリーニングでこれらを順に取り除いていきます。

「ワックス落とし」の工程では最上層のワックスを落としていきます。所謂化粧落としの工程になります。

ワックスは蝋でできているので、油性のクリーナーを使って落としていきます

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まずはフランネル布を指に巻き付けます。このとき、指先の布がピンと張るようにします。

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指先で少量のクリーナーを取ります。取りすぎた場合は、指先を別の布にポンポンと付けて調節します。

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指先で弧を描くように、ワックスが付着した部分をこすっていきます。

通常ワックスは爪先と踵、両サイドなどシワができにくい部分に塗ります(シワができるとワックスを塗った部分はヒビ割れてしまうため)。

自分でメンテナンスした場合は塗った部分だけ、そうではない靴(中古や新品)は全体にかけていくのがよいでしょう。

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擦ると指先が黒くなっていくのがわかると思います。表面のワックスが浮いて布へと移ってきているためです。

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黒みが増してきたら、布を一旦指から解いて再度きれいな面が指先にくるようにします。

ワックス部分を擦り終わったら再度馬毛ブラシをかけます。これによって表面に残った余分なクリーナーを取り除きます。

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乾いた布で全体を磨いておくと更に綺麗になります。

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5. 乳化性クリーム落とし

クリーニングの最終工程は乳化性クリーム落としです。

水性のクリーナーを使って、全体の古くなったクリームと汚れを落としていきます。所謂洗顔の工程になります。

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[エム・モゥブレィ] 汚れ落とし M.モゥブレィ ステインリムーバー    60ml

[エム・モゥブレィ] 汚れ落とし M.モゥブレィ ステインリムーバー 60ml

こちらも少量を指先に取り、

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全体を指先で優しく、弧を描くように擦っていきます。こちらも指先が黒くなってきたら布の面を変えることを繰り返しながら実施していきます。

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全体を擦り終わったら、同じようにブラシで余分なクリーナーを落としていきます。

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これでクリーニングの工程は完了です。

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表面の汚れが取れて綺麗になりました(左がクリーニング後、右がクリーニング前ですが、分かりづらいと思うのでリンク先で拡大してみてください)。

次回はここに乳化性クリームを塗り込んでいく「保湿・補色」の工程について説明します。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part3

2回に渡って革靴について説明してきました。

前々回

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前回

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リーズナブルな合皮の靴が存在する中で、なぜ比較的高価な天然皮革の靴を選ぶのか。

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その理由はこれから説明するメンテナンス方法に大きく関係しています。

天然皮革の靴を選ぶ理由とは?

  • 長持ちする

    天然皮革で作られた靴は合皮や布製の靴と比較するととにかく丈夫であり、通常の利用ではまず破れたり千切れたりすることはありません。

    また、ケア用品を使って適切にメンテナンスしたり、ソール(靴底)を交換することで長い年月を共に過ごすことができます。

    特に、グッドイヤーウェルトという製法を採用している靴はソールの交換が容易であるため、3-10年もつと言われています。

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    グッドイヤーウェルトはコバ部分(靴底の外縁)の張り出しが大きくなっているのが特徴です。

  • 使い続けることで味が出る

    天然皮革で作られた革靴は、使い続けることによって色合いや手触りに変化が生まれ、所謂”ヴィンテージ”感が出ます。 そういった変化を楽しむことも革靴の魅力と言えるでしょう。

  • 持ち主に馴染む

    天然皮革は丈夫である一方で伸びるため、例えば靴であれば使っていくうちに伸びて使用者の足の形に馴染んでいきます。

    そういった理由から、購入するときは少しキツめのものを買い、シューキーパーを使ったり、何度も履き続けることで自分の足の形に変形させて合わせていくのがよいと私は考えています。

    逆にジャストなものを最初から買ってしまうと、履いているうちに伸びてフィット感が失われてしまいます。

    以上3つの理由から、革靴の良さは使い続けていくことにあると言えます。 だからこそ、メンテナンスが重要になってくるというわけです。

メンテナンスの流れ

では具体的なメンテナンスの流れについて説明していきましょう。

クリーニング

まず最初に実施するのはクリーニングです。

クリーニングとは読んで字の如く、靴を綺麗にすること。

過去に塗って古くなったクリームやワックス、通常の利用によって付着したゴミや塵を取り除くことによって、メンテナンスのための土台を作るのが目的です。

ゴミや余分なものが付いた状態でクリームを塗り込むと、ゴミまで一緒に塗り込んでしまうことになるだけでなく、ゴミがが表面の油分や水分を吸収し、乾燥の原因になってしまいます。

したがってクリーニングの工程が最も重要だと言えます。

保湿・補色

次に実施するのが保湿・補色です。

天然皮革も動物の皮なので、人間の皮膚と同様に適度に保湿する必要があります

そのため、全体に乳化性の保湿クリームを塗り込むことによって、適切な油分・水分を補給するのです。

クリームには色付きと無色(ニュートラル)のものがあり、色が剥げてきた場合や変えたい場合、部分的に違う色を入れたい場合は色付きを、そうでない場合はニュートラルのクリームを塗り込みます。

鏡面磨き

最後は鏡面磨きです。

よく先端がピカピカに光っている靴を見かけると思います。

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それを実現するための工程が「鏡面磨き」になります。

あの光沢は蝋でできたワックスを革靴の表面に塗り、水を使って磨きこむことにより実現します。

鏡面磨きの目的は単に靴自体に光沢を持たせて目立たせるだけではなく、靴の表面を蝋でコーティングすることによって、水や傷から護ることもあります。

次回はクリーニングについて詳しく説明します。

7meshのサイクルウェア(夏物)をレビューしてみた part2 - QUANTUM JERSEY MEN'S

前回はサイクルアパレルブランドである7meshと、そのサマーアイテムのラインナップについて簡単説明しました。

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今回はその夏物ウェアの中から、3種の半袖ジャージのうちの一つであるQUANTUM JERSEYについてレビューしていきたいと思います。

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さり気なく主張するブランドロゴ

QUANTUM JERSEYの前面・背面共にデザインは非常にシンプルです。

ピラミッド型のロゴがワンポイントで配置されています。

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このロゴ、シンプルながら妙に心惹かれるものがありませんか?

よく見ると2色の黄色で色分けされているのがわかります。

実はこの明るい上部分が"7"(7MESHの7)を、暗い下部分が"M"(7MESHのMESHのM)になっており、2つ合わせて7MESHを表すようになっているのです。

これに気づいたとき、一人でおお!となっていました(笑)

そしてこのピラミッドロゴは自転車乗りたちのシンボルである「山」にも見えるのですが、ただの山ではありません。

"7"はMt. Garbardi(ガリバルディ山)を、"M"はchief(チーフ)を、7MESH生誕の地であるカナダ、ブリティッシュコロンビア州スコーミッシュを象徴する大と岩をモチーフにしているのです。

ブランドロゴを紐解いてみると結構面白いですよね。なんとなくですが、そのブランドが何を大切にしているのかわかるような気がします。

そしてこのワンポイント、よく見てみると光沢があり、そして触ってみるとグリップ感と凸凹を感じます

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ただのプリントではなく、ゴムのような素材を貼り付けた立体的な意匠になっているのです。

非常にシンプルなデザインにも関わらず見入ってしまうのは、そこに込められた意味とこの工夫が組み合わさった結果なのでしょう。

2つのジップ付きバックポケット

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これ、かなり珍しいと思います。

バックポケットにジッパー付きポケットを付けているジャージは多いですが、それを2つも付けているのは7meshくらいしかないのではないでしょうか。

この手のポケットは、貴重品やスマートフォンなど絶対に落としたくないものを入れるのにうってつけです。 QUANTUM JERSEYはジップ付きポケットが2つあるので、右側は家の鍵、左側は財布もしくはスマートフォンといった使い分けが可能です。

このあたりの設計思想は、激しく動くであろうMTBのウェアを作っている視点から来ているのでしょうか。 MTBのライドはロードよりも物を落としやすいですよね。

ジッパーを引っ掛けやすいようにリングが付いているのもポイント

便利な反面突き出た木の枝なんかに引っかかりそうな気もしますが、ロードで使う分には問題ないと思います。

抜群の着心地

身に纏ってまず他のジャージと違うな、と思うのが着心地の良さです。

とにかくフィット感が良い。言葉で表現するのが難しいですが、生地が肌に吸い付くような着心地

7meshのサイズチャートとRaphaのサイズチャートを比較した結果、私のサイズとしてはSが適切だとわかったので、Sをオーダー。

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身長183cm、体重67kgの私がSサイズを着ると見た目かなりピチピチに見える(サイクルジャージとしては許容範囲のフィット感なので特に問題はなし)のですが、見た目に反してキツい感じは全くなく、むしろ動きやすさすら感じるほど。

なんならこのままベッドに入ってしまいたい…そう思わせるぐらい抜群のフィット感があります。

同じくジャージを着用して試走していただいたzerocycleさんも「今までのジャージでは感じたことのないフィット感ですね」と仰っていました。

私の勘違いではないレベルでそうなんだということでしょう。

このQUANTUM JERSEYの着心地の良さを実現している要因の一つは、生地の組成がポリエステル100%であることでしょう。 ポリエステルは非常に耐久性が高く、速乾性に優れるのに加え、非常に肌触りが良いという特徴があります。

私の所持している他の夏用ジャージを見ると、ポリエステルに加えライクラ(エラスタン)を含むものが多いです。

イクラは伸縮性に富む素材のため、部分的・または分散させて組み込むことでジャージ全体の伸縮性を上げているのでしょう。

一方でQUANTUMは100%ポリエステルなので、ポリエステルが持つ肌触りの良さを強く感じるということかもしれません。

ポリエステルは強度が高い分伸縮性に劣りますが、それほど着心地の悪さを感じないのは以下2点の工夫によるものと考えられます。

人間工学に基づいた立体裁断

肩周りに三角形に線が入っているのがわかりますでしょうか?

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人間の筋肉・骨格の形に合わせて布を縫い合わせているため、このような線ができています。 このため通常のTシャツと同じように畳もうとしてもうまくいきませんが、いざ着てみると身体の動きに非常にフィットするようにできているというわけです。

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直立の状態で背中側を見ると生地が弛んでいますが、これはロードバイクに乗るときの姿勢に合わせたカッティングになっているから。 前傾姿勢になって初めて身体にフィットするように作られているわけです。

カニカル・ストレッチ

日本の7mesh公式サイトのQUANTUM JERSEYのページに「メカニカル・ストレッチ」という見慣れない単語が載っていました。

www.sun-west.co.jp

どうやらこのカニカル・ストレッチがジャージの伸縮性に一役買っているようです。

日本語で調べてみたのですがいまいちヒットしないので、英語で検索してみるとそれらしき生地素材の販売サイトがヒットしました。

www.homecrafttextiles.com.au

Mechanical stretch is a fabric that has stretch properties but spandex or other stretch yarns are not used when they are woven. The stretch is usually created in the finishing process, where the high twist polyester yarn once woven has a small amount of stretch which gives in garments.

説明文をまとめるとこんな感じでしょうか。

  • カニカル・ストレッチは伸縮性を持つが、スパンデックス(ライクラのこと)や他の伸縮性のある素材を使っていない。
  • ストレッチ(伸縮性)は仕上げ工程において加えられる。
  • 強く拗じったポリエステルの糸が少量のストレッチを衣服に与えるようになる。

つまり、ポリエステルをめっちゃツイストすることによって生まれた素材は若干の伸縮性を持ち、その作業を施した素材をメカニカルストレッチと呼んでいるということですね。

QUANTUMがポリエステル100%なのに着心地が良い理由がものすごくよくわかった気がしました。

なぜライクラを利用しないのか?

これは公式サイトにも書かれていることですね。

イクラは親水性が高い素材です。 つまり、一度水に濡れてしまうとなかなか乾かないということ。

夏は汗を沢山かくので、快適性という尺度ではできればライクラはあまり使いたくない素材なのかもしれません。

一方でスポーツウェアとしての機能性を考えると伸縮性は重要です。 それが少量のライクラを生地に利用するサイクルウェアが多い理由なわけです。

しかしイクラを利用しなくても伸縮性を担保できるとしたらどうでしょうか?

そこに一つの答えを出す素材がメカニカル・ストレッチであり、まさにQUANTUM JERSEYはそれを利用しているからこそライクラを利用する必要がないということでもあります。

優れた耐紫外線性能

このQUANTUM JERSEYはUPF 50+であり、これは衣類のUVカット性能としては最高値です。

UPFはUltraViolet Protection Factor(紫外線保護指数)の略で、UVカットの世界的基準値になります。

数値は高いほど紫外線を透過しない(つまり吸収する)ことになり、日焼けしにくいということになります。

例えばUPF 50であれば、その衣類を身に纏った場合、地肌を直接紫外線に晒したときよりも同じ日焼けにかかる時間が50倍になることを表しています。

つまり直射日光の下に10分いることでできる日焼けは、UPF 50の衣類を着ている箇所においては10*50=500分かかるということです。

50+はその数値が50よりも上であることを示しています(50よりも大きい数値の場合は全て50+に丸められる)。

ちなみにポリエステルは元々高い対紫外線性能を持つということなので、組成をポリエステル100%にすることはQUANTUM JERSEYのUPFに大きなアドバンテージを与えていることになりますね。

洗濯におけるパフォーマンス

前述したようにQUANTUM JERSEYはポリエステル100%のため、強度が高いです。 したがってガシガシ洗濯していくことができます。

念の為洗濯表示を見てみましょう。

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  • 水温30℃を限度に、洗濯機で洗える
  • 漂白不可
  • ハンガーを使って吊り干し
  • アイロン不可
  • ドライクリーニング不可

洗濯機でガシガシ洗ってハンガー干しでOKですね。

漂白剤はNGです。カラー展開としては白がありますが、絶対に利用しないようにしましょう。

また、アイロンもご法度です。ポリエステルは可燃性が高く容易に燃えて(溶けて)しまいます

そもそもサイクリングジャージにアイロンかける必要はあるのか?いや、ないだろ…という気もするけど、猫を電子レンジに入れる人がいるくらいだからする人が出てきてもおかしくはないのか?

まとめ

QUANTUM JERSEYについてまとめてみるとこんな感じです。

  • 便利で使い分け可能な2つのジップ付きポケット
  • シンプルなデザイン、さりげなく存在感を主張するワンポイントロゴ
  • カニカル・ストレッチのポリエステルを使うことによる速乾性と伸縮性の両立
  • UPF 50+の高い対紫外線性能
  • 洗濯における耐久力の高さ

最高の技術と素材で優れたデザインのウェアを作る。そんなアークテリクスの魂を受け継ぐサイクルアパレルブランドである7mesh

このQUANTUM JERSEY一つとってみても、その魂を体現すべく様々な工夫がなされていることがわかりました。

実際に長距離を走ってみたレビューは後日アップしたいと思います(お約束)。

次回はメリノウール製のAshlu Merino Jerseyをレビューします。