Weekendcycler

Cycling, taking photographs, and drinking a cup of coffee on the weekend

7meshのサイクルウェア(夏物)をレビューしてみた part1

7meshとは?

7meshというサイクルアパレルブランドをご存知でしょうか?

7mesh.com

かの有名なクライミングギアブランドであるARC'TRYXの創設メンバーがカナダのブリティッシュコロンビア州 スコーミッシュでスタートさせたサイクルウェアブランドです。

ARC'TRYXは"There is always a better way"(「物事にはより良い方法が必ずある」)という哲学をブランドの根幹とし、最高峰と技術と素材、そして優れたデザインを兼ね備えたクライミングギアを生み出し続けるブランド。

そのデザイン性の高さはクライミングの範囲を超えてタウンにも及び、昨今ではブランドアイコンである始祖鳥の化石の意匠が刻まれたバックパックを背負う人々を街中で散見するようになりました。

そんなARC'TRYXの創立メンバーが始めたサイクルアパレルブランドが7mesh。

7meshのブランドコンセプトは『より快適でデザイン性の高いウェアで自転車に乗りたい』という、我々サイクリストが常日頃持つシンプルかつ当然の欲求に対し基準を設けること

性能とデザイン両方を追求するという点はARCT'RYXに通ずるものがありますね。

サイクリングというスポーツについて

サイクリングというと、皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか?

運動強度が低いスポーツであるという認識が多いのではないでしょうか。

サドルに座り続けるため、足だけで自重を支えるランニングと比較し足腰への負担が小さい。 同時に、上半身が固定されるため内蔵への負担も少ない。

確かに、他の運動と比較すると運動強度はかなり低いと言えます。

一方で運動強度が低いからこそ、長く走り続けることができるということを意味しています。

そして、その限界を試すような競技が自転車界には多く存在しているのです。

過酷なサイクリングイベント「ブルベ」

私が2018年一年間を通して参加してきたブルベ(Breveはフランス語で「認定」)というサイクリングイベントはその最たるもの。

ルールは非常にシンプルで、決められた制限時間内に決められたコースを走ることで認定されるというもの。

一見簡単そうですが、認定の中には距離は600km, 制限時間は40時間にも及ぶものもあります(PBPというパリで4年に1度開かれるブルベの王様は1200kmを60時間で走破しなければならない)。

(認定のバリエーションは200km, 300km, 400km, 600km, 1000km, 1200kmなど色々)

600kmというと、東京大阪間よりちょっと多いぐらいでしょうか。通常は新幹線や飛行機など文明の利器の力を使って行くレベルの距離感ですよね。

その600kmを40時間で走るとなると、常に時速15km出ていれば完走できます。 この数字は一見簡単そうに感じられますが、いざ走ってみるとこれが意外に厳しい。

特に600kmなど制限時間が1日を超える認定については、疲れからのパフォーマンスの低下・事故を防ぐために睡眠が必要になるケースが多いです。 (かなり速い人は睡眠なしで走ってしまうのですが、殆どの人は途中に睡眠を挟む)

そのためにスピードを上げて走り、そしてコンビニでの休憩時間を最小にし、時には走りながら食事し、なんとか作り出したバッファを睡眠時間に充てることで走り切れるという感じ。

ちなみに自分が600kmを完走したときは(走力が低いこともあり)39時間30分のギリギリでした。

サイクリングに求められるウェアの条件とは?

さて、そんなサイクリングに求められるウェアの条件とはどのようなものでしょうか。

サイクルパンツのパッド(ロードバイクなどのスポーツ用自転車のサドルはクッション性が殆どなく硬いため、自転車用のパンツには厚手のパッドが付いている)が薄いと、地面からの振動でお尻が痛くなるし、形状が合わないと股擦れを引き起こしてしまいます。

夏場は日焼けによる体力の消耗を防ぐと共に、かいた汗をすぐに発散させ肌を常にドライに保つことで快適性を担保する必要があります。

逆に冬場は冷たい風から身体を守りつつ、登坂などでかいた汗をうまく発散できないと長時間に渡って冷えが続き、体調不良やパフォーマンスの低下を招きます。

雨の際はしっかりと撥水すると共に、隙間から水の侵入を防ぎ身体を冷やさないようにしなければなりません。

加えて、長時間走り続ける場合は朝と夜の寒暖差、気温の変化などにも柔軟に対応できる必要があります。

と、このようにサイクリングというスポーツを長時間続ける場合は常に快適でなければならず、そのためにウェアの品質が重要になってくるわけです。

そんな領域に、今まさにアウトドア業界で培った技術を引っさげて風穴を開けようとしている7mesh(と勝手に想像)。 そのウェアは一体どんなパフォーマンスを発揮してくれるのでしょうか。

まずは今の季節柄入り用な夏物ウェアの全体像を紹介しつつ、それぞれを順に不定期でレビューしていきたいと思います。

夏用ウェア①: 選べる3種の半袖ジャージ

では早速7meshが誇る夏用ジャージについて紹介していきましょう。

なんと用途に応じて3種類から選ぶことができます。

  1. HIGHLINE JERSEY

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7meshが誇るジャージの中で最も軽量かつタイトなジャージです。 空力を意識したカッティングになっており、最もレーシー(競技向き)なモデルになります。

  1. QUANTUM JERSEY

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7meshのノーマルジャージと言っていいライン。 レース以外の練習やロングライドなどで選択することになりそうです。

  1. ASHLU MERINO JERSEY

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メリノウールを素材に使ったジャージです。当ブログでも何度か紹介しているメリノウール。 速乾性(通気性)と暖かさを両立しつつ、防臭・抗菌効果も期待できる素材です。

夏用ウェア②: パッカブルなウインドブレーカー

  • CYPRESS HYBRID JACKET

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ウインドブレーカー夏に必要なくない?と思う方も多いと思いますが、夏こそ森林限界を超える峠にチャレンジできる季節。

標高2,000mの峠ともなると麓よりも12℃ぐらい気温が低いことになるので、頂上や下りで確実に身体を冷やします。

そんなときの必需品がウインドブレーカー。

夏用ウェア③: ビブショーツ

  • MK3 BIB SHORT

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ショートレングスのビブショーツです。 脚の動かしやすさやパッドの快適性などに着目してレビューしたいところ。

次回はQUANTUM JERSEYからレビューしていきます!

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続く

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part2

前回は私が革靴を好きになったきっかけについて説明しました(メンテナンスについて何も話してないし)。

weekendcycler.hateblo.jp

今回は革靴の定義から始まり、種類やTPOについて書いていこうと思います(メンテナンスの話ちゃうんかい)。

革靴の定義

まずは今回のメンテナンスで扱う革靴について定義したいと思います。

本記事では革靴を「天然皮革から作られた靴」と定義します。

天然皮革とは?

天然皮革とは、鞣(なめ)された動物ののことを言います。

鞣し(なめし)とは、樹液や薬品を用いて動物の皮に耐久性をもたせる工程のことで、 この工程を経ることで動物の皮膚である“皮”は製品に使用される”革”となります。

皮は生物の一部であるため、このような加工をしないと固くなったり腐敗してしまうというわけです。 所謂「本革」と呼ばれるものは天然皮革になります。

天然皮革になる皮を持つ生物は多種多様で、有名なところで言うと牛、ワニ、蛇、馬、カンガルーなど。

最も有名なのは牛革で、ほとんどの革靴は牛革製です。 仔牛から取るために傷がなくしなやかなカーフ、何度も蝋を塗り込み耐久性を高めたブライドルレザーなど。

www.ganzo.ne.jp

ブライドルの表面は白い粉がふいているように見えますが、これは塗り込んだ蝋と油が染み出した「ブルーム」というもの

一方でカンガルー皮はどうかというと、以前紹介したSPINGLE MOVEから カンガルー皮を使ったスニーカーが出ていますよね。

weekendcycler.hateblo.jp

カンガルー革は牛革とは比べ物にならないほど柔らかく、ストレッチに富んでいて非常に履き心地が良いです。 その性能を活かしてか、自転車用のシューズやサッカースパイクにも使われています

road.cc

BONTのシューズは非常に興味があったのですが自分の足とは合わなかったので断念した記憶が。。

また、馬の臀部、早い話がケツの皮から作られた皮革であるコードバン(cordovan)は、一頭から採取できる量が少ないことから希少性が高く非常に高級

非常に滑らかでしっとりとした質感が特徴的である反面、強度が弱いことから小物や革靴の内側などに利用されてます。

www.ganzo.ne.jp

キャッシュレス化が進みつつある昨今ですが、コードバン製の財布を手に入れるのが私の密かな夢だったりします。

あくまで趣味だから、機能とか気にしちゃいけない。

代表的な革靴の種類

前回のブログでブローグ(革靴のアッパーに小さな穴を空けて装飾としたもの)やオックスフォード(最もクラシックな革靴)について少し言及しました。

今回は革靴の種類についていくつか紹介したいと思います。

というのも、実はTPOに応じて最適な革靴のタイプが変わってくるからなんですね。フォーマルのときはこれ、パーティだったらこれ、カジュアルだったらこれ…みたいな感じで。

それをしっかり押さえてこそ紳士なわけです(自己満足だけどね)。 でもせっかくの友だちの結婚式、しっかりキメていきたくないですか?

ストレートチップ(キャップトゥ)

所謂キングスマンの劇中で言うところのオックスフォード(最もクラシックな革靴)がこのストレートチップになります。

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爪先に直線(ストレート)のステッチが入ったシンプルなデザイン。爪先(トゥ)にキャップを被せたような見た目なので、キャップトゥとも呼ばれます。

余計なものを削ぎ落としたその姿はとても美しいです。 何より、シワができやすい爪先に一直線が入っていることでシワが目立たなくなっているところがポイント高いですね。

写真で紹介している靴はスペインのMAGNANNI(マグナーニ)というブランド。

www.magnanni.com

クラシックでありながらモダンな遊び心が調和した非常に格好良い靴を作ります。 その証拠に、普通のストレートチップと違って縫い目のステッチが隠されているんですね。

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デザインは全体的にイタリア系のシュッとした感じ。

Santoniの革靴欲しいけど予算が。。という人におすすめなブランド。 www.santonishoes.com

ちなみに、このストレートチップは革靴のタイプの中でも最もフォーマルに適しています。

プレーントゥ

プレーン(平坦な、簡素な)トゥ(爪先)の名の如く、爪先に何の意匠もないまっさらなタイプの革靴です。

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装飾が一切ないシンプルなフォルムであるために、ベースとなる木型の形や革本来の質感が放つ魅力がより顕著に出るタイプです。

一方で、トゥ部分が一枚皮から作られるために、良い革でないと安っぽくなってしまったり、シワが目立ちやすくなってしまうといった欠点もあります。 故に故最も選び方が難しいタイプと言えるでしょう。

プレーントゥの特徴が最も色濃く出たのが、踵部分以外に継ぎ目がないホールカットです。

鏡面磨きでピカピカにすればかなりドレッシーになり、パーティーで目立つこと請け合いの一足です。

パンチドキャップトゥ

パンチド(穴の空いた)キャップトゥの名の通り、キャップトゥ(ストレートチップ)の一直線に沿って穴あきの意匠が入ったタイプになります。

最もフォーマルである「ストレートチップ」に飾り気が追加されたことで、やや格式が下がりますが、それでもキャップトゥに次いで格式高いフォーマルよりのタイプです。

ビジネスシューズとして選ぶのであれば、キャップトゥまで行かなくともこのパンチドキャップトゥでも十分畏まったスタイルと言えると思います。

ウイングチップ

ウイングチップは、トゥにW字の意匠があるタイプです。

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写真のように、ブローグ(穴あきの意匠)が組み合わせられることが一般的です。 このW字が翼のように見えることから、ウイングチップと呼ばれています。

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格式としては、パンチドキャップトゥより低いけれど、ぎりぎりビジネスでも履ける一足。 もちろん、穴あきのドレッシーさを活かしカジュアルでも履いていくのも良いですね。

ローファー

これは皆さんもご存知なのではないでしょうか?ローファーです。

今日紹介するシューズの中で唯一レースアップ(紐で結ぶタイプ)ではない革靴、所謂スリッポンです。

loaferという言葉自体が「怠け者」という意味を持つ他(本当の由来は不明)、紐がない(締まりがない)、着脱が容易であるということからビジネスシーンにはそぐわないとされています。

一方でそのスタイルは若さや開放感を感じさせ、カジュアルな場面では大活躍。

ワイルドな男性がフットカバーや素足にローファーを合わせるのはとても格好が良いですね。

またお客様先に行くのではなく、オフィスカジュアルとしてであればアリだと思います。

革靴のタイプを格式順に並べるとどうなるか?

ここまで紹介した革靴のタイプを格式高い順に並べると以下のようになります。

  1. ストレートチップ(キャップトゥ)
  2. プレーントゥ
  3. パンチドキャップトゥ
  4. ウイングチップ
  5. ローファー

ここで着目していただきたいのが以下の点です。

  • ストレートチップが最も格式高い
  • 穴あきよりも穴なしの方が格式高い
  • スリッポンよりレースアップの方が格式高い

また、前回少しだけ説明したように「内羽根式」の方が「外羽根式」の方が格式高くなります

更に、色は黒が最も格式高くなります

最も格式高い革靴は?

というわけで、これまでの情報をまとめると最も格式高い革靴はズバリ

黒の内羽根式ストレートチップ(キャップトゥ)となります。

これを一足持っておけば、結婚式でも、ビジネスでも、パーティーでも問題なし。

逆にここから外すとなると、場とセンスが問われることとなります。

結婚式の主役が年下や同僚なら黒のウイングチップでもOKとか、若者のパーティーならピカピカに磨いたホールカットとか。 場に合わせて色々という感じでしょうか。

最後に

「こういうシーンではこの革靴を履くべき!」というような言い方をしましたが、外していったからと言って怒られることは殆どありません。

というのも、正直言って日本では革靴のフォーマル度をわかっている人は少ないですし、街を歩くサラリーマンや結婚式で他人の靴を見ても千差万別です。

どちらかと言うと、革靴を選ぶ際の指標にしていただけたらいいなと思って書きました。

「今日は大事な商談だから、気を引き締めて黒のパンチドキャップトゥで行こう!」

とか、

「今日は休みの日だからローファーで少し崩したスタイルにしよう!」

とか。

そうやって考えたら靴選び、もといファッションも楽しくなりませんか?

私はそっちのほうが楽しいと思います。

今日はここまで。次回からは(やっと)メンテナンスに入ります。

革靴の手入れ方法についてまとめてみた Part1

皆さん、革靴履いてますか?

かくいう僕は革靴が好きで、フォーマル・カジュアル問わず履いて街を歩くのが好きです。

勉強会で革靴のメンテナンス方法について説明するぐらい好きです。

革靴を好きになったのは2014年に観た映画「キングスマン」がきっかけでした。

kingsman-movie.jp

キングスマンは、英国紳士姿の凄腕のスパイ達が駆使して難事件・テロリズムを解決するというスパイ映画

その中でこのようなフレーズが出てきます。

“Oxford, not brogue.(「ブローグではなく、オックスフォード。」)”

ロンドンのサヴィル・ロウ(ロンドンのオーダーメイドの名門高級紳士服店が集中している通り、背広の由来)にある高級テーラーキングスマン」に電話をかけ、 この合言葉を言うとシークレットサービスに繋がる…という劇中の印象的なシーン。

ここでいうブローグとは、革靴に対して施す意匠の一つで、表面にパンチング(穴を開ける)して装飾にしたものを言い、 この意匠がある革靴はよりカジュアル向きになります。

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一方でオックスフォードは(諸説あるが)以下のような内羽根式、トゥ(つま先)と紐を通す鳩目部分が一体化している紐靴のことを言います。

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多分この説明だけだとわかりにくいので、外羽根式の例を一つ貼っておきます。

上記のように、鳩目部分がトゥから分離している(浮いている)タイプが外羽根式。 こちらはブラッチャー(blucher)という別名があります。

さて、ここで「ブローグではなく、オックスフォード」という台詞を思い返してみましょう。

ブローグは意匠、オックスフォードは靴のタイプ。

となるとこれらは比べられるようなものではないことがわかります。

何を言ってるかというと、「ブローグの装飾があるオックスフォードも存在し得る」ことになるわけです(というか↑で挙げた茶色の革靴がまんまそれなのですが)。

ではなぜ、「ブローグではなくオックスフォード」なのか?

ここでキングスマンのスタイルがクラシック重視のものであることを考えると、おそらくブローグのことをカジュアルな穴あきシューズ、オックスフォードのことを装飾のないシンプルでクラシックなシューズ、と表現したかったのでしょう。

ラシックスタイルであるキングスマンに相応しいのはシンプルなシューズであると。

これを知ったとき、これまで似たように見えていた革靴一つ一つが全て微妙に異なること、またその違いに意味があることに気づき「革靴面白いじゃん…」となったのでした。

それから5年程経過し、革靴とそのメンテナンス方法についてもある程度知識が付いてきたということもあるので、 今回は順を追って革靴とそのメンテナンス方法について説明していきたいと思います。

次回に続きます。

自転車で残雪の白馬を走って絶景を撮ってきた vol.3

前回

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宿に荷物を置いた我々は青鬼の棚田に向かうことにした。

青鬼(あおに)は、白馬村にある山村集落である。

ここに日本の棚田百選に選ばれた美しい棚田があるということで、風景好きとしては行かないわけにはいかない。

www.nagareki.com

青鬼の集落まではホテルから8kmほど離れており、途中にも絶景スポットがあるということで寄り道しながら向かうことに。

白馬大橋からの眺め。

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雄大だ。時期的に川の水は殆ど枯れてしまっており、橋の下に降りて写真を撮っている人もいた。

次は岩岳のスキー場前交差点へ。

岩岳スキー場の入り口前では素晴らしい白馬連峰の姿を拝むことができる。

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気温が上がり雲が出てきたことも相まり、一層白さが際立つ白馬連峰

村の背後に神々しい山々が立つなんとも言えないアンバランスな構図だ。日々この山を背後に暮らすというのはどのような感覚なのだろうか。

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きっとこの村に暮らす人々は慣れてしまって何も感じないのかもしれない。

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しかし少なくともコンクリートジャングルで暮らし続ける私にとって、その光景は壮大さや美しさを感じると同時にに畏怖の念を抱かざるを得ないものである。

青鬼の集落の前には超のつく激坂が待っていた。ふとサイクルコンピュータを見ると斜度17%の表示が。キツすぎる。

ここまでの走行距離は70km程度と少ないが、坂ばかりのコースということもあり脚には疲労が溜まっていた。 残った力を絞り出すようにペダルを踏み回していく。

くねくねと蛇行する山道を1kmほど登ると、急に視界が開け集落の入り口が現れた。

集落には金属製の覆いが被せられた茅葺屋根の家屋が立ち並んでいるものの、人の気配はあまり感じられなかった。 家屋には人は住んでいないということだろうか?

入り口の地図を見ると棚田は集落の頂上付近(集落は山肌に形成されているため、道には傾斜がある)にあるということなので、更に登っていく。

何かの目印だろうか?

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300mほど登り、ついに棚田を一望できる場所に到達。

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ここでも奥に遠く霞んだ白馬連峰が見える。本当にどこに行っても見張られているかのようだ。 それにしても雄大白馬連峰をバックに広がる田んぼと集落という組み合わせは実に美しい。

田にはまだ水が張られていない。

本来田植えは気温14℃程度、最高気温が20℃程度の時期に実施されるそうだ。

先週まで雪が降っていたということを考えると、水張りにはまだ早いということだろう。

このままでも十分に美しい青鬼の棚田だが、やがて水が張られると、空が田んぼの水面に移りこむことでより一層素晴らしい風景を見せてくれるに違いない

我々は少し休憩してから宿へと走り出した。

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前景に田んぼ、背景に白馬連峰というある意味完成された構図とも言える。

白馬の風景は本当に美しい。 特に山に自転車が向かっていくという写真には自然と人という強弱の対比を感じる。何枚撮っても飽きない。

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宿に戻ってきてからやることは決まっていた。飯だ。

長野というのはとにかく平坦路がない県である。 関東平野に住んでいると平坦が当たり前ということもあり、尚の事違和感があるのだがその違和感は身体にも現れる。

早い話がそれなりに消耗しており、とにかく腹が減っていた。 風呂に入ってから飯を食うとなると臭いがついてしまうということもあり、先に飯を食う運びになっていた。

そしてサイクリング後に食べたいものと言えば…

肉だ

そう、肉

なによりも運動によって損傷したタンパク質を補給できる。

そして美味い。これ重要。

テルマンにおすすめの肉料理の店がないか聞いてみると、近くに鉄板焼きの店があるとのこと。 二つ返事でそこに行くことに決め、予約を取ってもらった。

そしてなんとホテル側で送迎のシャトルを出してくれるとのこと。

しかも我々専用。

これも時期的に観光客が少ないせいだろう。

シャトルを待つ間、1日の疲労のためソファで意識を失いかけているSKを横目に館内を撮影する。

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空いたグラスを観ていると発行した赤色の液体が飲みたくなってくる。あとはチーズとハムがあれば最高。

そうこうしているうちにシャトル準備が完了し、乗って10分もしないうちに店に到着した。 www.google.com

店に入るとカウンターに通された。

鉄板の目の前で”この世で一番美味いもの”が生成されていく過程を眺めるそれが鉄板焼きの醍醐味と言えよう。

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マスターがとても気さくな人だったので、「この時期って観光客少ないですよねぇ…どうしてなんでしょう?」と聞いてみる。

やはりスキーするには雪が少ないし水分が多すぎるし、登山やハイキングには雪が多くいまいち桜も咲いてないし、他のアクティビティもまだオープンしていないし。。ということで、来る人が少ないらしい。 もっと来て白馬を盛り上げてくれればいいのにー。と仰っていた。

自転車は路面が乾いていれば乗ることができるし、これまで挙げてきた絶景を観ればこの時期でも十二分に楽しめるということがおわかりいただけたと思う。

ホテル代もクオリティの割に安いし人が少ないおかげで至れり尽くせり、もはや皆来るしか無いのでは。。(いや来すぎると逆に楽しめないのか?)などと考えている間に料理が上がってきた。

まずはコースとは別に追加注文した焼き魚。レモンのソースが実に爽やか、魚も肉厚で大変美味しかった。 20190413-DSC01077

そしてメインの肉!これを待っていた。。 20190413-DSC01080

美味くないわけがない。 空腹と疲労は最高のスパイス、言うなればなんでも美味いがそれを超えて尚美味い

最高のひと時を味わい、余韻に浸っていると予め連絡していたシャトルが到着。 乗り込むとあっという間に宿についた。

ちなみにホテルの前は激坂になっており、かつてヒィヒィ言いながら登っていたことを思い出した私達は文明の利器の素晴らしさを実感し、人力で坂を登ることの重要さ(世の中の便利さを知ることができるということ)を噛みしめるといういつものお約束をこなしたのだった。

ホテルについてからはこれまた山岳地帯にはお約束の温泉だ。これ以上ある?ないよね?という感じ。

その日はあっという間に眠りにつき、気付くと朝になっていた。 朝食はホテルらしくビュッフェ形式。美味い多い最高。

ビジホも含め、ホテルの楽しみと言えば自分は朝食を挙げる。 とにかく大食らいということもあり、腹いっぱい好きなものを食べれるビュッフェスタイルは大好きだし、特に旅行先はその地その地の食材を使った食事が出るので楽しみが増す。 特にクロワッサンにバターと蜂蜜を塗りたくって食べるのが最高(名物ちゃうやんけ)。

ちなみにここまで至れり尽くせりなのに宿泊料金は朝食付きでビジホに毛が生えたレベルのお値段。本当に大丈夫か?という印象。

www.mominokihotel.com

故にこの時期(4月中旬)の白馬サイクリングはかなりおすすめできるアクティビティの一つと言える。

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尚帰りは来た道を通って帰った。ほとんど下りなので楽なものである。

旅を終えてみて

今回の旅を終えてみてとても良かったことがある。

それは満足のいく自転車旅の写真が撮れたということ。

無論、一眼を持参したこと、運良く天気が最高に良かったこと(これは仕事を頑張っていたご褒美と思いたい)がとても大きい。

しかし一番大きかったのは自転車仲間SKの存在であろう。

これまでの自転車旅は一人で行くことが多かった。故に、主題のないただの風景写真になってしまっていた

そこにSK、サイクリストという被写体が主題として加わることにより「ただの風景写真」から「自転車旅写真」としての写真としての物語性が強くなり、より自分の撮りたい写真に近づいたように思える。

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これまでも何度か述べてきたが、サイクリストと自然というのは強弱の対比であり、敢えて文明の利器が闊歩するこの時代に自分の力で自然に挑んでいこうとする力の現れでもあると感じる。

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SKが主題となることで、そういった人間の強さ、自然の雄大さ、またそれらを合わせたものを表現できたと強く感じている。

また、SKには写真を良くするために様々な注文をつけたがそれに快く答えてくれたのが大変有り難かった。 おかげで良い写真が撮れたと感じている。

3回に渡って書きなぐってきた白馬自転車旅の記事の最後は、彼への礼で締めくくることにする。

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自転車で残雪の白馬を走って絶景を撮ってきた vol.2

前回

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長野駅から白馬村までは平均2%もない緩やかな登り基調。

市街地を抜けると山道が始まる。狭くごつごつとした狭い道をひたすらに登っていく。

4月前半かつ標高もそれなりに高いということもあり、道の周りは枯れ木で溢れていた。

そのせいかいくつもあるトンネルを越えた先の景色はひたすらに茶色。

なんとも寂しい旅路である。

故に、最後のトンネルで唐突に訪れたその瞬間の鮮明さは脚を止めるのに十分であった。

そのトンネルを越えた先の景”色”だけは違っていたのだ。

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見えた色は茶色ではなく白銀。

そう、トンネルを抜けると雪国であった。

白馬連峰。その圧倒的な白雄大さに思わず脚を止めてしまった。

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元々この嶺方峠から見える白馬連峰の景色が大変美しいという評判を聞き、国道406号線を通るルートを選んだ。

その美しさは雲一つない快晴も相まって想像以上であり、我を忘れてシャッターを切り続けた。

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そして疲れた身体と最高の景色を眼前にして食べる補給食とスポーツドリンクの美味さは筆舌に尽くしがたいものがある。

だが、それがいい」の一言に尽きる。

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しばしバイクを停め、SK(今回自転車旅行に一緒に来ている会社の元同期)と歓談していたが、この間「すごい」しか言っていなかったと思う。

圧倒的な景色の前には語彙力は消え去るのみであった。

大自然の前では人は生まれたばかりの赤子同然ということを意味している。

さて、登ったらあとは下るのみ。 嶺方峠の頂上から標高にして300mほどの下りをこなすといよいよ白馬村の中心部に到着(一応嶺方峠の白馬村)。

まずは昼飯処を目指して走る。

この白馬村内を走ってみて改めてわかったことがある。

なんと村のどこにいても白馬連峰が見ることができる絶景村なのである。 とにかくシャッターを切る手が止まらない。

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とにかく雄大

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ちょっと脇にそれてもなお存在感を放つ。

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長野に来たならば!ということで昼飯は蕎麦に。 tabelog.com

三種の味が楽しめるという三昧蕎麦を注文してみた。

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三味蕎麦

三種の味とは、通常のそばつゆ、辛み大根汁のおしぼり、くるみだれ。

辛味大根はかなり辛味が強く玄人好みという感じ。味噌を入れながら少しずついただく。

一方でくるみだれは甘みとまろやかさがちょうどいい塩梅で、これはかなり好きな味。 蕎麦自体の大変美味しく、おかわりしてしまった。

蕎麦湯がまた温かくて染みる。

空腹がおさまったところでホテルへ。 www.mominokihotel.com

これから白馬を周遊するということで、余計な荷物を置いておいてもらうのが目的。

受付に行くと外国人ぽい人が出迎えてくれたが、なんと日本語ペラペラ。 周りを見るとスタッフは外国の方が多く、かつ皆さん日本語が達者。

そういえば外のバーで外国人観光客が酒盛りしていた。 北海道のニセコと同じように白馬も海外人気が高いのかもしれない。

荷物を預けた後、再び白馬の村に向かって漕ぎ出した。

part3に続く。

自転車で残雪の白馬を走って絶景を撮ってきた vol.1

「その週末なら泊まりで走りに行けるわ」

という自転車仲間SKの一言で、白馬に行くことに決まった。

元々SKとは渋峠に走りに行こうなんて話をしていたのだが、今年は渋峠も浄土平も噴火レベル引き上げの影響で開通の見通しが立っておらず難しい状況。

weekendcycler.hateblo.jp

どこかいいところはないかと思案していたところ、頭に浮かんだのはAACRだった(アルプスあづみのセンチュリーライド)。

www.cyclowired.jp

cycrowiredの紹介ページにて雄大白馬連峰をバックに走る自転車の写真を観て、 かねてから走ってみたいと思っていた場所だったのだ。

提案してみたところSKは二つ返事でOK。いい景色好きは話が早くて助かる。

早速白馬の宿も予約。閑散期のためめちゃくちゃ安い

登山には早くスキーには遅いこの時期、アクティビティのメッカ白馬としては絶妙に微妙なタイミング

ロードバイクで走る場合、天気が良くて路面が乾いていれば最低限はOK。風景がどんなものかは出たとこ勝負といったところ。

ちなみに今回は(ついに)Weekendcyclerを体現すべく週末のみの自転車旅。まずは以下のように大まかに日程を決め、直前で細かく詰めていくスタイルをとった。

  • 土曜日の早朝に新幹線で長野へ
  • 長野から(何らかのルートを通り)自転車で白馬へ
  • 白馬周遊(自転車)
  • 長野日曜に新幹線で東京に帰ってくる

一週間前くらいに急激に気温が下がり雪が降るという事態があり旅行の決行が危ぶまれたが、その後気温が上昇していったのでなんとかなりそうな雰囲気。

前々日くらいの天気予報では1日目が晴れ、2日目が曇り~雨ということが前々日くらいにわかったので、絶景スポットは土曜に含めるように調整。

ちなみにここだけの話、キャンセル料全額負担のプランにしていた(その代わりに宿代が安くなる)ので天気についてはかなりヒヤヒヤしていたのでホッとした。

また、長野駅-白馬のルートはAACRではなく以下の最短距離を走ることにした。

理由は以下の通り。

  • 土曜朝スタートだと白馬に到着するまでに時間がかかりすぎる(電車の乗り継ぎや自転車での走行距離)ので絶景を見る頃には日が暮れている可能性がある
  • サイトで紹介されている自分が走りたいと思っていた景色はほとんど白馬付近なので、手早く白馬に行ってしまって周遊したほうが良い

ちなみに白馬における周遊スポットは行きの新幹線で決めるという適当さ。 しかしその適当さがありがたく、これくらいの行き当たりばったり感は非常に楽で良い。

あと、直前の方が(切羽詰まって)集中して調査できるので効率がいい。

そういうことにしておいてほしい(普通に遊びに行くときにやると怒る人もいるから気をつけてな!)。

そんなこんなで当日を迎え、長野駅到着。

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長野駅輪行袋を解き、組み立てる。

左がSKのバイク、右が自分のバイク。どちらもフレームはBMCである。

自分がBMCを手にしたのは偶然みたいなものだが、何故か自分の周りにはBMC乗りが多いような気がしなくもない。

今回は走行距離は短いものの宿泊するので着替え等々持ってきており荷物が多めになっている。 両バイクともにフレームバッグ、サドルバッグを装備。

ちなみに自分はREVELATE DESIGN(リベレイトデザイン)のバッグを使っている。 www.revelatedesigns.com

他にもアピデュラ、フェアウェザーなど色々あり、特にアピデュラなんかは使っている人が多いイメージ。 購入したのは2年くらい前だったか。

最初はサドルバッグを購入。リベレイトデザインにしたのは、単純にバイクに合う色(赤黒)ということと、シートポストに当たる部分に滑り止めが付いていたのが大きな理由だったと思う。

(荷物を入れれば入れるほどモーメントが大きくなって走りに影響が出るので、ズレないほうがよい)

www.revelatedesigns.com www.tokyolife.co.jp

公式を見るとビスカチャ(サドルバッグ)はラインナップから消えているので、廃版っぽい? この辺のレビューも今度詳しく書きたいところ。

にしても、こうして2台並べて見るとなかなか感慨深い。 SKがこのバイク(左、BMC SLR02)を買ったのは社会人1年目だからもう6年目くらいになるだろうか。

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購入当日

当時は105にRacing 7だったのが、今やSRAM Red eTapにShamal Milleという最高クラスまでグレードアップしていることに加え、ブルベ・SR取得を通してバイクパッキングもマスター。

完全に沼に浸かった状態と言っても差し支えないだろう。

これからも非常に楽しみである。

さて、2台並べた写真をクリックしてFlickrに飛んでもらうとわかるが、今回の旅は一眼を持ってきている。 素晴らしい景色に出会いに行くのだから、フォトグラファー(自分で言うの恥ずかしいな)ならば一眼を持っていかないわけにはいかない。

カメラはいつもどおりSONY a7iiだ。

kakaku.com

一眼とはいえミラーレスなのでボディだけで500gなので軽いと言えば軽い。

ちなみにレンズも二本持ってくるという大盤振る舞いだ。

kakaku.com

kakaku.com

今回選んだのは標準単焦点と広角ズーム。 55mmだと(自分的には)ぎりぎり被写体の歪みが気にならないため、自転車メインの撮影で利用する想定。 広角ズームは無論風景をダイナミックに切り取ることが目的

ボディ・レンズ合計してしめてお値段30万以上、自転車のことも考えるとこれで落車したらしばらく立ち直れないレベル。

ちなみに走行中の運用はストラップによるたすき掛け。

ストラップだとぶらぶらして危ないのでは?という心配があると思うが、ここは長さをワンタッチで調整できるDiagnalのニンジャストラップを使用

www.rakuten.ne.jp

かれこれカメラを始めたときに購入してから5年くらい使っている。

シートベルトのような材質なので快適な使い心地とは言えず普段使いには向かないが、こういう局面で真価を発揮する。

撮りたいと思ったときに緩め、撮り終わったら再びキツく絞める。 それが短時間でできるので非常に楽である。

他にも色々手段はある(通常のストラップ使われる方もいる)と思うが、自分はこれで問題なかった。

ちなみに、自分は過去サイクリング中のカメラたすき掛けには否定的だった。以下の記事でも書いている。

weekendcycler.hateblo.jp

これはかねてから多くのサイクルフォトグラファー達に実践されている方法であるが、 実際問題として落車したら終わりだし、ボディが背中から蒸発する汗をモロに浴びることになるので湿気による破損の危険性がある頑健な一眼レフならまだしも、ミラーレス一眼はそういった使用に耐えられるようには作られていないという恐れがあった。

とはいえ、やはりリュックは疲れるし著しく快適性を減じる。それだけ旅の楽しさも減ってしまうということに他ならない。

そこで、一度ロングライドで試してみることにした。 白馬ライドから一週間ほど前に参加したときがわサイクルフェスタというイベントで実践。

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結果特に問題なかった(EVFにめちゃくちゃ汗がついててまずいなと思ったけど)ので、白馬ライドでも使ってみることに。

ちなみに利用していない方のレンズはフレームバッグに収納している。 微妙に膨らんで形が崩れているのがおわかりいただけるだろうか(自分のバイクは右)。

そんなこんなで長野をスタートし白馬へと舵を切った。

続く。

水野学 著「センスは知識からはじまる」を読んでみた その③

前回は、本に書かれた以下について私の所見を述べました。

  • センスとは、数値化できない事象を最適化すること
  • センスのいいアウトプットをするには「普通」を知ることが重要

weekendcycler.hateblo.jp

今回も引き続き本の内容の気になった部分について、写真撮影の話を交えつつ所見を述べていきたいと思います。

センスは知識からはじまる

センスは知識からはじまる

客観情報の集積がその人のセンスを決定する

本書では、客観情報を知識として集積することでセンスを向上させることができると述べています。

センスの最大の敵は思い込みであり、主観性です。 思い込みと主観による情報をいくら集めても、センスはよくならないのです。

「主観」や「思い込み」の例として、本書では以下の二人の人物を比較対象に上げています。

  • なんてことはないセーターを着ているのに、お洒落に見えるA君
  • 流行りのセーターを着ているのに、お洒落に見えないB君

冒頭で述べたことが解答になるのであれば、A君は客観的な知識を集積していてセンスがある(結果的にお洒落に見える)のに対し、

B君は主観的で思い込みが強いのでセンスがない(結果的にお洒落に見えない)

ということになるわけですが、ここでいう「客観」「主観」「思い込み」は、文中で以下のような例で説明されています

A君はファッションについてよく勉強していて流行について精通しており、 かつ自分の個性や体型、雰囲気など客観的な情報を集積している

したがって、A君は現在のトレンドに合うかつ自分にも合う服を選ぶことができる。結果お洒落に見える。

一方でB君はファッションについて勉強していて流行は知っているが、 「流行しているものがよい」という強い思い込みだけで服を選び、 自分の客観的な情報は無視しているため、結果お洒落に見えない。

つまり、一般的な知識(ここでいうところのファッションの基礎知識や流行)に

現在の状況(自分の体型、雰囲気、TPOなど)という客観的な情報を加味し

より適切な選択肢を取ることがA君にはできている。

つまり、センスの定義である「数値化できない事象」である「お洒落」を「最適化する」ことができているというわけです。 (本書におけるセンスの定義は、数値化できない事象を最適化すること)

写真における客観的視点とは?

これを写真で考えるとどういうことなのかを必死に考えてみました。

写真を撮る上で客観視という観点はかなり重要と感じます。 なぜなら写真もファッションと同様に「人に評価されるもの」であるため。

コンテストに自分の作品を提出する、クライアントの要望通りに写真を撮る、展覧会を開いて他人の目に晒される。

「上手くなりたい」という感情を持ち続ける限り、写真というアクティビティは常に「評価」と闘い続ける宿命を持っていると言えます。 (自分の好きなように撮って楽しむ場合は別にするとして)

私が特にそれを強く感じるのは、自分が全身全霊をかけ良いと思ってアップした写真よりも、 そうでない何気なしにアップした写真のほうが評価が高かったときです。

これは、自分が良いと思い込んだ写真がいつも他人にとって良いわけではないということ。

つまり「思い込み」で続けていたのではいつもよい評価を得られるわけではないことを意味しているわけですね。

だからこそ自分の写真を常に客観視し、評価に晒し、評価される他者と比べて何が違うのかを追求し続けていくことが重要なのだと思います。

Animated Bedrock by weekendcycler1015 on 500px.com

ちなみにこれ、自分ではそうでもないと思ったけれど意外と評価が高かった写真です。

このような写真で何が良かったかを振り返り、客観的な「知識」として集積していくことが自分のセンスを上げる近道になるんだろうなと思います。

これを撮影したときの自分には「解像度」や「ピント」ばかりを追求することが良いという「思い込み」があり(もちろん構図なども考えていましたが)、 この写真はそこまで解像感を感じず、目を見張るほどの奥行きを感じるほどピントが合っているとも感じなかったため自己評価は低い作品でした。

一方でコメントからわかるように、構図右上から射し込む光とそれが作る光芒、そしてそれに照らされて染まった木の葉の鮮やかさが評価されたことがわかります。

光は一瞬、そのときににしかないもの。このことからの学びは、フォトグラファーは一瞬を切り取る者でなければならないということ。

効率よく知識を増やす三つのコツ

さて、既にこれまでの記述でセンスを磨くには「客観的な集積していく」、そして「普通を知る」必要がるとといった抽象的な方針は決まりましたね。 本書ではそれらを進めるコツについて「効率よく知識を増やすコツ」という形で紹介されているので、一つずつ見ていきたいと思います。

①王道から解いていく

「王道のもの」とは、製品によっては「定番のもの」「一番いいとされているもの」「ロングセラーになっているもの」と言い換えることができるかもしれません。

所謂自転車のパーツだと王道は世界一のシェアと信頼性を誇るSHIMANOになると思うのですが、何故王道から始めるのがよいのでしょうか。

本書で定義付けているセンスのよさとは、「数値化できない事象の良し悪しを判断し最適化する能力」。 王道ものは必ず、その最適化プロセスを経た上でいまに存在しています。 ゆえに王道のものを知ることで、そのジャンルの製品を最適化する際の指標ができるのです。

つまり、王道、言い換えれば無難なラインを知ることで、最適化するためのベースを作るということのようです。

しかし、王道を知ろうとした場合、自分のよく知っているジャンルのものならすぐに頭に浮かびますが そうでないジャンルで考えるとなかなか難しい気がします。

その商品が王道たり得る根拠を求め、調べるプロセスにおいて、いくつもの取捨選択をします。 結果、「王道」を見つけたときには、そのジャンルにまつわる幅広い知識も得ており、 その商品を王道とした理由だけでなく、「なぜ別のBという商品を王道として認定しなかったのか」についても語れるようになっているはずです。

これが意味するのは、「王道を見つけるのに近道はない」ということなのではないでしょうか。

「王道」を見つけるために様々なものを調査し、知識を吸収し、あるとき立ち止まると自分の中ではそのジャンルにおける「王道」、つまり「普通」(文中では名言されていませんが)がわかる状態、つまり数値化できない対象を最適化できるようになっているということなのかと。

例えばあるジャンルの写真(ポートレートとか。ちょっと幅が広すぎるけど。。)が上手くなりたいと思ったら、ひたすら他人の撮ったその写真を観てみる。 本を読んでみる。人に聞いてみる。といったことを繰り返し、集積していくしかないということでしょうか。

どうすればそれを継続できるのか、具体的な方法論はまた別の話になると思います。

この本はどちらかというと、マインド的な部分について語っていると言えるでしょう。

②今、流行しているものを知る

流行しているものの多くはたいてい、一過性のもの。 しかし、王道と流行のものの両方を知っておくことで、知識の幅を一気に広げられます。

流行を知ると知識の幅が広がるということですが、どう広がるかは書かれていませんでした。

しかし流行を知ることは非常に重要だと私は考えています。

なぜなら、前述したように写真は常に評価に晒されるものだから。

流行というのは発端がどうあれそれだけ多くの人が追っているということ。

ということは、それだけ多くの人に見られるということでもあり、評価の機会を増やす、もしくは得やすいということでもあるわけです。

写真で流行の例を挙げるとすると、一つは季節柄毎年来るもの、春の桜やネモフィラがありますよね。

またそれとは別に何かが起因となって爆発的に流行になった一過性のもの。 例としてはよろしくないですがノートルダム大聖堂が全焼したことで、その前の綺麗な姿の写真をアップする人が増えたとか。。

そういったものはSNSを追っていれば自然と目にしますが、目にしたときにどのように自分に記録しておくかが重要な気がします。 ◯月はネモフィラ、◯月はチューリップとか。 あとはこういう事件が起きたとき人は行動するという人間の心理をメモしておくとか(これは賛否両論だと思うけど)。

③「共通項」や「一定のルール」がないか考えてみる

分析したり解釈することで、自分なりの知識に精製するというプロセスです。

これは割と書いてあるままのことですね。

写真で考えると、流行している写真だとか、王道たる写真、長く愛され続けたり多くの人に撮られ続ける写真には何らかの「共通項」や「ルール」があるということ。

以前このブログでも取り上げたテンプレ構図もその最たるものだし、

weekendcycler.hateblo.jp

ライブハウス撮影方法やパート3で止まっている工場夜景撮影の方法なんかもある意味向上を美しく撮影するための「ルール」なわけです。

weekendcycler.hateblo.jp weekendcycler.hateblo.jp

これらを知ることで、自分の中で「普通(王道)」や「流行」を定式化して活用できるようになるということだと思います。

これについては、ある目的に従い(例えばこのジャンルの写真を上手く撮れるようになりたいというモチベーションのもと)、 「共通項」や「ルール」を見つけるつもりで様々なものを見るとより一層習得が早まる気がします。

おわりに

この本を数週に渡って読みこみながら、書かれているマインドがどう写真撮影に昇華できるのか考えてきました。

結果思ったのは「やるしかない」部分が大きいなということ。何にしてもそうかなと思います。 けど、意識して取り組めばセンスは身につく。

あとはこれらのコツをどう実践していくか、具体的な落として考えなければいけないですね。。